「学級王国」という言葉があります。
主に小中学校などで、学級担任がそのクラス内のすべてを掌握して独自の学級経営を行い、外部からの介入を排除するような状態のことを言うようです。
これ、日本語学校にも似た状況あるな~と思っています。
日本語学校のクラスが学級王国になりがちなワケ
多くの日本語学校では、一つのクラスを複数の教員が曜日ごとに受け持ちます。
ですから一週間を通してその学級を見るのは決して一人ではありません。
が、一日単位で考えてみると、四コマ(午前半日とか、午後半日とか)同じクラスを一人の教員が担当するということです。
それ、かなり長い時間です。
一人の教員が一つの教室で長時間過ごすと、学級王国が出来やすくなります。
ですから教科ごとに先生が変わる中学校より、小学校に学級王国状態は顕著に見られるそうです。
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しかも小学生はまだ幼く、圧倒的に「大人」である教員が「正しいことを教える」立場ですから、「王」にもなりやすいのでしょう…。
そして、日本語学校でも、当然母語話者である教員の方が「正しい日本語を教える」立場として「王」になってしまう・・・。
小学校と非常に似ている気がします。
(しかも、「日本語が拙い」のは、「子どもだから」ではなく、単に「学習歴が浅いから」なのですが、中には完全に子ども相手であるかのような話し方をしてしまう教員もいます。相手は大人なのに! 大勘違いです!)
学級王国の実態
もちろん「学級王国」であっても、元々スキルの高い教員であれば、とてもいい状態にクラスを保てるのかもしれません。
が、そうでない教員が王国を作ってしまうと最悪です。(そしてその方が確率は高い…)
独自の方法でやりたい放題。
しかも、自分の方法を外部の目に触れさせようとしない。つまり自分の授業を他の人が見学することを拒む。
口出しされたくない、そして実は自信もないのでしょう。
自分の王国は自分のルールに従って動くべきで、そこに他国(?)から攻撃(???)を受けたくない…まるで鎖国の江戸時代ですね…。
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学級王国はみんなが損する
私が一番問題だと思っているのは、ベテランの教員が良くない意味での「王」になってしまうことです。
ベテラン教員というのは長年の経験があるので、自分のやり方に固執しがちです。
しかもベテランですから年齢もそう若くないことが多いです。様々な新しいやり方に順応できなかったり拒否反応があったり、柔軟性に欠けていたり・・・といった人もいます。
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そういうベテラン教員は自分の授業に何か口出しされることをプライドが許しません。
何か新しいやり方やより良い方法を提案されても、いろいろと理屈をつけて拒否しがちです。
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長年こういう風にやってきて何の問題もなかったのに、なぜ今さら変えないといけないの?
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日本語自体は昔も今も変わらない。教えるべきことも変わらない。時代と共に教え方を変える必要はないでしょう?
と考えているのかもしれません。
でもこれって、「誰得」なんでしょう?
新人や中堅の教員がベテランの授業を見て勉強することもできない。
ベテランの教員が自分の授業を第三者からフィードバックされることもない。
誰も成長しません・・・・・。
成長の止まった教員から教わる学生にとっても不幸な話です。
裸の王様
困ったことに、こういう「王様」・・・「裸の王様」・・・ってけっこう多い気がします。
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私も若い頃、勉強のために授業を見せてほしいとお願いして、何度か断られたことがあります。
もちろん教員が緊張して普段通りの授業ができなくなるとか、学生も落ち着かないとか、裸の王様にもいろいろ言い分はありそうです。
確かに授業は教員にとっての一丁目一番地、主戦場です。
学生に真剣に向き合って授業をしている最中に、突然、無断で誰かが教室に入ってきたりしたら、それは動揺もするでしょう。学生も驚き、集中力が欠けてしまうかもしれません。
ですから見学希望者は前もって(見せる教師の方も心の準備は必要でしょうからなるべく早めに)お願いはしておくべきだと思います。
でも依頼された側にそれを断る「権利」はないと思います!
なにしろプロとしてお給料をいただいて、その学校を代表してクラスに入り、学生に授業をしているわけですから。
いついかなる時に見られても堂々と授業ができないと、本当はおかしいのです。
それができないなら、「王」どころか「教師」失格だと思います。
見学のススメ
とはいえ、です。
とはいえ、誰かに見られることは緊張しますよね(笑)
でも私は基本的に断りません!
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若い頃、すばらしい授業を快く見せてくれた先輩教師がいました。
今も「どうぞ見てください」と言ってくれる教師仲間がいます。
そういう人たちと一緒により良い授業を作るために切磋琢磨していきたいなあ・・・と、
思っているからです。
・・・ということで、日本語教師仲間の皆さん!
授業はぜひ積極的に見学し、そして見学されましょう!!
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