
日本語教師として、授業ってどう進めればいいんだろう・・・?
日本語教師を始める前・始めたばかりの頃の私は、何度も悩みました。
もちろん教える場が日本語学校である場合、多くの先生は日本語教師養成講座に通って資格を取ったと思います。
養成講座では、教え方を一通り教わるでしょうし、実習もあるはずです。
※ちなみに、私がおススメする養成講座はこちらです。
(なぜ↑の講座をお勧めするのか、その理由は、こちらです)
でも、実習の少ない養成講座で学んだ人や、養成講座に通わず理論を自分で勉強した人にとっては、実際の教室での進め方はなかなかイメージがわかないもの。
私自身がそうでした。(勉強はしましたが、実際の日本語教育の現場は見たことがない、という状態で日本語教師を始めたのですから、今思い出しても我ながら冷や汗ものです…)
そんな人におススメしたい本があります。
それが、こちらの本「教授法マニュアル」(にほんごの凡人社)です。
この一冊のおかげで、私は授業をリアルにイメージできるようになりました。
この本をお勧めする理由は・・・
〇初級文型70例収録。「わたしは田中です」「これは本です」…等、基礎から網羅されている!
〇教師のセリフや動作の例まで細かく解説されていて、現場ですぐ使える!
といった点です。
そしてこの本をお勧めしたいのは、主にこんな方です。
〇日本語教師としてこれからデビューする人・デビューしたての人
〇「現場」(実際に教えている教室)をリアルにイメージしたい人
〇日本語教育については独学だけれど自信を持ちたい人

教授法マニュアル70例(にほんごの凡人社)

これ、古い本です。なにしろ初版は1993年。四半世紀以上前のものです。
でも!
特に日本語教師をこれから始めよう、あるいは始めたばかり、という先生にとっては、今でも非常に参考になると思います。
いわゆるCan-doシラバスとかタスクシラバスとか、そういうものがいろいろ言われる前のもので、文型シラバスが幅を利かせていた頃の本です。例文が若干古いかな?と思うものもあります。
とはいえ、直接法※で分かりやすく教えるには、具体的にどんな動きで、どんな言葉を発して進めていけばいいのか? という、直接法の「初歩の初歩」のような所について詳しく書かれていて、そうした部分は今読んでも色あせていません。
※直接法:日本語を、日本語で教え、伝える教授法のこと。媒介語を使わずに行う技術です。これ、日本語ゼロベースの初級者向けに行うのは、けっこう難しいんです!
中を見ると・・・
目次には
1 わたしは田中です▶名詞文の導入
2 これは本です▶「これ、それ、あれ」の導入
3 これも鉛筆です▶助詞「も」の導入
4 ・・・
39 わたしの言うように言ってください。▶目的・内容を表す言い方
40 先生の手紙はもう着いたでしょう。▶推量・推測の表現-2
といったように初級の学習内容が40項目並んでいます。
(下巻には30項目あるので、合わせて書名通り「70」例、収録されています)
そして各項目について、
予備知識・導入文例・準備教材・教授法(←ここはセリフや、中には手の動きまで(!)例示されているところもあります!)・展開文例・関連事項
等が細かく記載されています。
もちろん今はインターネットで調べれば、初級から上級までさまざまな文型、機能語の意味や接続、例文、中には簡単な教え方まで出てくることもあります。(質はピンキリのような気がしますが…)
でも、具体的な教え方をイメージできるところまで書いてあるものは、私が見る限り少ないと思います。
そんな中、この本はとても具体的です。
新人日本語教師だった私が悪戦苦闘しているさなかに、本屋さんで偶然出会った本で、「ああ、こんな本に会いたかったのよ~!」と感動したことを今も覚えています。
ぜひ一冊、お手元に…。
(別に私、凡人社の宣伝マンでもなんでもありませんが)
自分なりに「使いこなす」
なお、こうしたマニュアル本は何でもそうですが、
ここに書かれているのは「例」として理解すべきものだと思います。
これは「本」ですから、この教授法を実際に行う際の「声」や教室の「空気」、学生の「雰囲気」までは伝わりません。
ですから、この教授法を生かすも殺すも実践者次第だと思います。
100%、本通りにやる必要はなく、むしろ自分の担当している相手に合わせて臨機応変に変えるべきだと思います。

ちょっとコーラスが多いな。学生は飽きるだろうからここは簡略化しよう。
とか、

準備教材の絵は違うものにしよう。今はCanvaで簡単に作れるし。
とか・・・。
いろいろ工夫してアレンジをくわえていくといいと思います。
※なお残念ながら下巻はもう新品はないのかもしれません。アマゾンでも中古本しかない?ようです。上巻はアマゾンに新品が出ています。ちなみに凡人社のHPではもう紹介されていないようです…。
著者の富田隆行氏
著者の富田隆行氏は、元亜細亜大学で教授をされていた方だそうです。
私は個人的には何の接点もありませんが、本を通じてかなりお世話になってきました。
他に、同氏の『日本人の知らない日本語』という本も読みました。
まったく同じ書名で、世間で(少なくとも私の周囲の日本語教師界隈では)かなり話題になった
「日本人の知らない日本語」(蛇蔵&海野凪子)という本がありますが、それよりだいぶ前に出された本で、より硬派な本です。
(ちなみに後者の「日本人の知らない日本語」はシリーズで数冊出ています。非常にコミカルで読みやすいものです。日本語教師なら「あるある!」と笑いながら読み進められるものです。…私が現在勤務している学校の本棚にも鎮座しています!)
ぜひ一冊、お手元に!
私がなぜ今回この記事を書こうと思ったのかというと、
ものすご~く久しぶりに「初級」(日本語が全く分からない、ゼロベースの人)を教えることになって、本棚からこの本を手に取ったからです。
読み返してみて、久々に初級クラスの雰囲気をリアルに思い出すことができました。思い出すことで自信を持って初回の授業に臨むことができました。

ところがこの本、今や本屋さんでは見かけなくなったなあ、と気づいたのです。
上に書きましたが、インターネットで調べてみると、アマゾンに上巻は新品があるものの、下巻は中古品しかないようでしたし、凡人社のサイトでも紹介されていませんでした。
ということは、早晩、この本は手に入らなくなてしまう?
何度も私を救ってくれた、こんな良い本なのに!?
と、思ったのです。
日本語教育現場未経験でも自信を持って授業に臨むことができるようになるこの本、
手に入るうちに、ぜひ一冊お手元に!
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