板書? 私は板書なんてまったくしません!
という日本語教師は、いないと思います。
パワポで立派な資料を作って大画面で見せる先生でも、
なんだかんだとその場で書いて説明することはあるはずです。
そこで、今回は私が考える板書のコツ(方法やポイント)をまとめてみたいと思います。
※ときどきベテラン教師の方で、一見乱暴に見える板書をする方がいます。
勢いのある、学生がその勢いに巻き込まれてしまうような板書。
全然きれいな字ではないのに、見やすくて、スッキリしていて分かりやすい板書。
雑な棒人間の絵と矢印を使っただけなのに、パッと見てすぐに理解できる板書。
(なかなか伝わらないと思いますが、実際にそういう板書をする方がいるんです・・・実物をお見せできないのが本当に残念です!!)
・・・でも、そういう板書を素人はヘタに真似をすべきではありません!ケガをします(笑)
まずは基本をおさえてコツコツ上達していきましょう!
日本人が見て「きれいな字」がいいとは限らない
これ、初級学習者相手の場合はとても大事なポイントだと思っています。
日本人が母語を書く時、それぞれ何十年かかかって定まってきた一人一人の個性(癖字とか)があると思います。が、その個性はできるだけ消しましょう。
一般的には、漢字、ひらがな、カタカナの大きさに少し差をつけて書かれたものの方が日本人にはきれいに感じられると思います。(漢字を大きめ、ひらがなやカタカナは少し小さめにそろえる)
また、漢字の偏(へん)と旁(つくり)もバランスを考えて、大きさの比率を辞書にあるような標準的な書き方とは少し変えて書いたりする人もいます。
が、それを初級クラスの板書でやってしまうのは危険です。
それがスタンダードだと思い、極端に真似をする人が出てくるからです。
中級以上のレベルになっていろいろな日本人の手書きの字に慣れてきたころならともかく、
初級のうちは、辞書的に正しいバランスで字を書くほうがいいと思います。
・・・私は普段、漢字の偏と旁のバランスも辞書的な正しい比率にはしないことが多いです。
また、「使い方」「真ん中」のように一つの名詞の中で漢字と漢字の間にひらがながある場合は真ん中のひらがなは小さく書いたり、
「今日」や「明日」の二文字目「日」を小さく書いたり、
「~ます。」の最後の「す」を大きく書いたり、
編と旁の間は少し広めに開けて書いたりしています。
その方が全体として自分では見やすいと感じるからなのですが、いつしかそれが癖になっていました。(下はホワイトボードに書いた私の字です…)
が、ある時学習者に
先生の字は辞書とちょっと違うように見えますが、それが正しい書き方ですか?
それと、先生が黒板に書いた漢字は一文字で「訓」ですか?それとも「言」と「川」ですか??
のような意味の質問をされ、ハッとしました。
これは私自身の勝手なルールであって一般的なルールではありません。
それ以来、できるだけ辞書のようなバランスの字、そして均一のサイズの字を書くよう気を付けています。
もちろん、一画一画を続けて書くこともせず、きちんと切り分けて、書きます。
・・・私が思うきれいな見やすい字ではなくなりますが・・・。
もうひとつ、これは私自身には関係ないのですが、あまりにも達筆な字(行書的な…)は、学習者にはとても読みにくい字になってしまいますのでお気をつけください!
(もちろん、雑な字もNGです!きれいではなくても、丁寧に書くように心がけましょう!)
学生に背中を向けて黙々と書かない
これ、基本中の基本です。
たまにそういう先生を見かけます。
先生につられて学生も真面目に黙々と書き写す時間に・・・は、なりません!
学生はスマホを見始めます。ボーっとします。おしゃべりを始めます。集中力が途切れます。
黒板の正面ではなく、少しななめに体を向けるようにして立って、まめに振り返って学生の様子を見ながら、できるだけ話しながら、書くといいと思います。
そうすることで板書がまったく見えないという机の位置の学生が出ない配慮にもなります。
ごちゃごちゃ書きすぎない
ぱっと見てゴチャゴチャしている板書は、分かりにくいです。
必要なこと・重要なことだけを厳選して、整理して、すっきり書くようにしましょう。
色も使いすぎると分かりにくいです。
黒・赤・青の三色ぐらいで十分だと思います。
そして、色はその日の気分で適当に選ぶのではなく、基本は黒・品詞と接続は青、などといつも同じ色に決めておくと学生にとって親切だと思います。
また、もし大きい黒板なら、端の方(どれぐらい大きい黒板かにもよりますが・・・全体の4分の1か5分の1ぐらいの所でしょうか)に線をひいておくと便利です。
この線で区切られた部分には正式な板書ではなく、その場で書いた方がいいと思ったことや、メモ、すぐに消してもいいもの、等を書きます。
また、授業の本筋の流れとは関係ないけれど覚えておいたほうがいい表現など。
ここに新出語彙を書きだしておくこともあります。(もしよければこちらの記事『【日本語学校】語彙を定着させるための簡単で具体的な方法』もお読みください)
そうすることで本筋のところは計画通りの、きれいな板書を維持できます。
思いついたことを広い黒板のあちらこちらの空いたペースに書いてしまうと、非常に見にくい板書になってしまいます。
本筋のところは一貫して同じ方向に整然と書いたほうが分かりやすい板書になります。
ぶっつけ本番ではなく、練習しておく
机の上で紙にペンで書くのと違って、立って壁に向かって書く板書は、意外と難しいものです。
黒板の字を一番近くで見るのは自分自身です。
その場ではまあまあきれいに書けたと思っても、少し離れて見ると印象が違う場合もあります。
毎回は無理かもしれませんが、ときどき空き教室の黒板を借りて練習しておくといいと思います。
そして教室のいろんな机の位置から見直してみると、自分の書き方の問題点が分かるかもしれません。
また、これは私が高校教師の頃に先輩の先生から聞いたコツなのですが・・・
板書の時、足を引いて少しだけ離れた位置に立って、黒板の広範囲を見ながら書くだけでも少し違ってくるよ。
このアドバイス、私にはとても役立ちましたので、ぜひお試しを。
まとめ
いかがでしたか?
最後に簡単にまとめておきます。
◎クセ字や個性的な書き方は避ける。(特に初級)
◎自分の背中で黒板を隠さない、話しながら書く。
◎色のルールを決めて、すっきり書く。書きすぎない。
◎黒板のはじの方に線を引いてメモコーナーのようなものを作ると便利。
◎ときどき板書の練習をしてみる。
◎若干黒板から離れ、黒板全体を見渡せる位置に立って書く。
少しでも参考になれば幸いです!
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