日本語教師、中でも専任講師の場合、仕事内容は案外幅広いですよね。
また、同じ専任講師でも、日本語学校と専門学校での違いもあります。
ここでは、私が以前専任教師として勤務していた日本語学校と専門学校での仕事内容をまとめてみました。
これから就職活動される方はもちろんですが、日本語学校から専門学校、または専門学校から日本語学校へ移る可能性のある方に少しでも参考になればと思います。
※もちろん学校によって違うこともいろいろあるかもしれませんが、一例としてお読みください。
日本語学校
以前の勤務していた日本語学校での主な仕事内容です。
- 授業
午前or午後の半日(45分授業×4回)、
もしくは午前午後通しの一日(45分授業×8回)。
一週間に16~24回程度入っていました。
クラスは初級から上級までいろいろ。
授業用のプリントやテスト類の作成、印刷。
テストや宿題の採点、チェック。
他講師への引継ぎ。 - 担任業務
①学生の出席管理
※欠席しがちな学生への指導。
長期欠席者の自宅やアルバイト先訪問。
➡行方不明になってしまうと大変です…。
(学校のペナルティになりますから)
もし学校を辞めるなら、確実に帰国するように事務の人と一緒に説得します。もし相手と同意が取れれば空港へ送り届けたりもしていました…。
※ 学校を辞める理由は、入管によってビザの更新が不許可とされた場合など。
理由は出席率の低迷(60%以下あたり)や、アルバイトの時間超過(学校がある期間は28時間/週以上はアルバイトができないルールがあります)など。
そういうときは、学生の受け入れ機関である学校が、責任をもって帰国させなければなりません。
②面談
勉強や進路の相談から生活相談、時に恋愛相談まで…
③学生の成績管理 - 進路指導
学生が希望する進路に関する情報収集。
進学のための出願書類のチェック。
面接練習、推薦書作成。 - 行事企画と運営
校外学習や校内イベントの計画と実施。 - 補習
学習が遅れがちの学生への補習。(病気など、認められるような理由がある場合) - シラバス・カリキュラム作成
新入生受け入れ時のプレースメントテストの実施。
結果に基づいたシラバス、カリキュラムの作成。
テキストの選定と発注。 - 非常勤講師対応
授業の相談、学生の情報交換。
欠勤の場合の調整や代講。 - 雑務
校内巡回や清掃、カギ閉め、JLPTの団体申し込み、来客対応(専門学校や大学から学生募集に来るなど)、学生がどこかで問題を起こした場合の後始末等々・・・
地味に大変。
ざっとあげてみました。
初任者のうち、あるいは初めて使うテキストの授業前は、準備だけで相当な時間が取られます。
専任は他の仕事をやりながらですから、激務は必至です。(そのため最初は非常勤の方がいいと言う方も多いです)
でもだんだん授業準備のストックができてきます。
ストックの見直しや手直しでよくなってくると、だいぶ余裕が出てきます。
その後の忙しさは日によります。
イレギュラーな問題事がもちあがると、かなり残業することになります。
また、これは知り合いの日本語教師から聞いた話ですが、その人が一時期勤務していた小規模校では事務課と教務課がきれいに仕事を分けておらず、学生の入学前・受け入れ時の事務的な作業(膨大な作業があります…)を教員が一緒にやっていたそうです。
「ここしばらくほとんど終電だ」と言っていた知り合いの暗い顔が忘れらせません・・・。
ろくに残業代も出ていなかったと思います・・・。
あれからだいぶ時間が経ちました。
世の中の状況もだいぶ労働者に有利に変わってきたと思います。
が、おそらくこの業界にはまだまだそれに近い労働環境の学校があるのではないかと思います。
就職時にはできる限りのリサーチをすることをお勧めします。
(日本語教師仲間の噂、ネットの口コミ、SNS・・・)
専門学校
次は専門学校です。
これも以前日本語教師として勤務していた学校での仕事内容です。
なお、専門学校といっても日本語学科ではありません。
日本語学科は上記の日本語学校と同じくくり(卒業後に大学や専門学校へ進学する【母国で大学を卒業している人など、一部就職する人もいます】ことを目標に、1年3か月~2年かけて、初級から日本語を勉強する流れ)ですから、仕事内容も大差はないと思います。
ここでの「専門学校」とは、上記のような日本語学校を卒業した人達が進学し、(日本語もしますが、日本語だけではなく)ビジネスや介護、観光、ITなどの学科で、卒業後の就職をめざして勉強する場所のことです。
- 授業
90分授業を1週間に8回程度。
※学生は基本的には学科で専門の勉強をします。
が、まだまだ日本語の勉強が必要。
留学生をたくさん受け入れている専門学校は、日本語の授業をカリキュラムに組み込んでいるところが多いと思います。
私はその授業を担当していました。
日本語学校を卒業して入学するわけですから、クラスに初級はありません。中級から上級レベルです。
また、その学校では基本一つの授業は一人で担当していたので、他講師への引継ぎはありませんでした。 - 担任業務
日本語学校とほぼ同じ業務。
が、空港へ送り届けるような仕事はありませんでした。
(長期欠席等で単位が取れない学生は、帰国を促しつつ日本語学校にはない「退学」扱いになっていました。日本人の学生たちと基本的には同じ学則が適用されているからです。ただしこの辺りは学校によって違うかもしれません) - 就職指導
留学生を受け入れる就職先の開拓、情報収集。
インターンシップ指導。
ビジネスマナー、履歴書や応募書類のチェック。
面接練習。 - 行事企画と運営
日本語学校とほぼ同じ。 - 補習
日本語学校とほぼ同じ。 - シラバス・カリキュラム作成
日本語学校より自由度が高かったです。
「卒業後に就職できる学生を育てる」ことを目標に、カリキュラムから大きくそれなければ、各授業の内容はかなり自由に決められました。
かなり斬新な授業も計画、実行できました。
そういうのが好きな人には、おすすめです。 - 非常勤講師対応
日本語学校とほぼ同じ。 - 雑務
日本語学校とほぼ同じ。
ただし来客は、留学生を採用したい会社の人達になります。 - オープンキャンパス
日本語学校にはない仕事です。
日本語学校の学生に、専門学校がどんな所かを知ってもらうためのもの。
学校の説明や模擬授業などを、主に土曜日に実施。 - 日本語学校訪問
学生募集のためです。
基本的には広報担当の職員が行っていましたが、教員が行くこともありました。 - 入学試験
これも日本語学校にはない仕事です。
日本語の入試問題を作り、当日に監督と採点。
もちろん留学生を受け入れる専門学校は日本中にたくさんありますから、一概には言えませんが、だいたい似たり寄ったりではないかと・・・思います。
結局どっちがいいの?
似た仕事も多いですが、私自身は専門学校の方が性に合っているように思いました。
個人的に一番大きな違いだなと思うのは、
「初級の授業がないこと」
でした。
日本語教師の中には、初級の、ほぼ日本語ゼロの学生に教えることの楽しさを日本語教育のだいご味だと言う先生がいます。(←確かにとても楽しいです!)
が、いろいろな話題について深いところまで話せる中上級の学生との授業の楽しさもまた格別です。
私はどちらも大好きですが、比べると後者の方が、より、好きです。
似ている言葉の使い分けとか、こ難しいN2N1の文法や語彙、ちょっと面倒な読解問題などを質問されてアタフタすることもありますが、それも含めておもしろいです。
それから、進学指導(日本語学校からは基本的に進学です)が好きか、就職指導(専門学校からは基本的に就職です)が好きか、という点でも、私は就職指導の方に、よりやりがいを感じました。
学生が日本で一生懸命就職活動をして内定を勝ち取った時は、我が事のようにうれしいものです。
日本に居続けることを選んでくれたことも、うれしく思います。
でももちろん、進学指導の方が刺激的でおもしろいという先生もいるでしょう。
つまり・・・
どっちがいいかは、人による。
ってことですね。
結論出ません!
最後にお給料ですが、私の場合、専門学校の方が若干高かったです。(日本語学校での経験を買われた部分もあったからだとは思います。最初から専門学校に就職していたらどうだったかは分かりません。ただし、依頼していた非常勤講師のコマ給も、専門学校の方が高かったです)
でも昨今の少子化で青息吐息の専門学校もありますから(日本人がほぼ入学しない学校いわゆる『ビザ専』もあります・・・)、お給料は「学校による」としか言えません。もし転職される方は、しっかり聞きましょう。
月額が高くてもボーナスが出ないとか、昇給がないとか・・・知り合いから聞いたこともありますから、お気をつけください。
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