私は現在、進学課程の日本語学校で教員をしています。
当然、ほとんどの学生が大学や専門学校への進学を目指して学んでいます。
が、中には進学ではなく、特定技能の道へ進む、つまり就職の道を選ぶ学生もいます。
その割合が増えているという事実・・・。
しかも「来日後に悩んだ末、進路変更する」のではなく、最初から特定技能を取得するつもりで留学してくるケースも目立ってきました。
特定技能制度が留学生の価値観を変えた
「特定技能」の在留資格が導入されたのは、2019年でした。
日本の深刻な労働力不足を補ってもらうために始まった制度で、
企業側のニーズは非常に大きいものでした。
以来、特定技能者数は急増し、法務省の資料によると各分野総計で今や33万人を超すそうです。制度開始からわずか数年で、主要な在留資格の一つになりました。
この「特定技能」資格を取得するためには、
・JLPTのN4以上(=初級)取得
・分野ごとの技能試験合格
が必要ですが、どちらもちゃんと勉強すれば、まあ、比較的取りやすいものです。
それを取得できれば、日本で通算5年(特定技能2号なら在留期間は上限なし!)働けるため、
短期間でお金を稼ぎたい層には、非常に魅力的に映るのでしょう。
爆発的に増えるのも納得です。
日本語学校に「特定技能目的の留学生」が増えている?
日本語学校で働く先生から、先日、こんな話を聞きました。

入学試験の時は「大学に進学したい」なんて殊勝なこと言ってたのに、日本に来るとすぐ「特定技能が取りたい」って堂々と言ってくるのよ・・・で、そのサポートをしろ、ですって!
・・・だとしたら、どうして最初(入学前)に嘘をつくんでしょう・・・。
おそらくですが、海外でこの在留資格が安易に紹介され、
妙な入れ知恵をする人たちがいるのでしょう。
進学課程の日本語学校にいる者としては、非常に複雑な気持ちになります。
もちろん教師として、学生の希望を叶えるべく応援したい気持ちはあります。
とはいえ進学課程の学校に、特定技能取得のためのカリキュラムは普通、準備されていません。
もし学生が自学で取得できたとしても、その先をしっかり安全な就職につなげられるようなサポート体制もありません。
その方面に詳しい教職員も少ないです。
・・・大手はともかく、小規模な日本語学校としては(少なくとも現状では)お手上げです・・・。
N2レベル以上であっても進学しない学生達
最近は、日本語能力が高い学生ですら、進学せず特定技能へ進むケースが増えています。
ある留学生は、私に、こんなことを言ってきました。

専門学校のオープンキャンパスで質問したら、日本人とは別のクラスで勉強すると言われました。そして日本語の授業もあるそうです。それなら日本語学校と同じだなあと思いました。外国人だらけの学校に何十万円も払いたくないです。それなら、最初から就職して40時間働いて、次の夢のためにしっかりお金を貯めたいです。
この学生はN2保持者で、日本語会話も流暢です。元々は進学するつもりで来日した人ですし、教師としては「もったいない!」と思ってしまいますが、本人にとっては何十万円というお金の方が「もったいない!」と感じてしまうのですね。
そういう人にとって「特定技能」は非常に合理的な選択なのでしょう。
特定技能は「人気資格」!
これからの特定技能在留資格はどうなっていくのでしょう?
受験者の急増により、既に試験結果通知が遅れがち?といった話が聞こえてきます。
運営側も対応に追われているのでしょう。
このままいくと・・・
・特定技能→日本語ができる人向けの人気資格!
・進学→それ以外の層の選択 ・・・!?
という構図になりかねません!
(※もちろん、非常に優秀な大学や特色のあるすばらしい教育をしている人気の専門学校も当然あります。それ以外の話です)
この制度が始まってまだ10年たっていませんが、既にこんな大きな変化が起きています。
この先10年で、さらに留学生の進路選択は変わるかもしれません。
そこには、当然、日本語学校の「認定校」化も深く関わってくるでしょう。
あくまで「進学課程」の日本語学校としては、
・入学時(可能なら入学以前)から、折に触れて「進学」の意識を高める努力をすること(その先のキャリア プランを描けるようにすること)。
・それでも特定技能を選ぶ学生がいる場合に備えて、教職員側が特定技能に関する知識を増やしておくこと。
・そして特定技能の分野ごとの技能試験の勉強もサポートできる体制を作っておくこと。
でしょうか・・・。
・・・大手はともかく、小規模な日本語学校では・・・(同じこと上にも書きましたが)
(文科省は結局、「進学課程」じゃない日本語学校を増やしたいんだろうなあ・・・・・と、独り言を言ってみる・・・)
日本語教育関係者として、目が離せません。

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