最初に、そもそもAIっていったい何?と言う方は、コチラの記事『今さら聞けない「生成AIって何?」…日本語教師の方へお勧めする理由』を先にお読みください!
生成AIが世間を賑わせています…というのはかなり控えめな表現で、
生成AIは今、急激な勢いで世界中あらゆる分野を激変させていると思います。
先日、英作文のフィードバックを生成AIにさせた高校の、シンポジウムでの実践報告について記事にしました。
(こちらの「高校教育(英語)の現場で使われている生成AI~日本語教育に応用できるか?」です。)
私もこの高校の試みに倣って、いくつかの日本語文で試してみました。
今回はその中から一例をご紹介します。
なお、文章を生成してくれる生成AIにはいろいろな種類がありますが、今回は先日視聴したシンポジウムでも名前があがっていたClaudeと、有名なChatGPT3.5を使ってみました。
どちらも無料版です。
Claude
まず、日本語がとても上手だと言われる生成AI「Claude」です。
以前、某学校の教え子に作文の宿題を出しました。
約一週間後に提出締切日を設定しましたが、提出できなかった学生から届いたのが、以下のメッセージです。
「作文は一週間ぐらいになったけど、半分ぐらい書けます。でも作文が終わりません本当の理由は、今まで私の生活はすごくストレスになっていますので、よく準備しませんでした。」
・・・まあ、意味は分かりますが・・・(ちなみにN3保持者でした。)
今回、この文をClaudeに修正してもらいました。
私はClaudeに下のように指示しました。
次の日本語の文章を、自然で分かりやすい文章に修正してください。なお、これを書いた人は日本語能力試験のN3に合格している人ですから、それにふさわしいレベルの語彙や文型を使ってください。
そしてCludeから出てきた文章は、こちら。
作文を始めてから一週間くらい経ちましたが、まだ半分ぐらいしか書けていません。実は、作文が終わらない本当の理由は、最近の生活がとてもストレスフルで、十分に準備できなかったからです。
素晴らしい日本語です。
さらに、私からは頼んでもいないのに、修正のポイントとしてこんなことも書いてくれます。
この修正では以下の点に注意しました:
1.文の構造をより自然な流れに整理しました。
2.N3レベルの語彙(例:「ストレスフル」)を使用しました。
3.文法的な誤りを修正し、より適切な表現に変更しました。
4.接続詞を適切に使用して、文と文のつながりを改善しました。
(「実は」が接続詞かどうかはともかく)すばらしい説明です。
ただ、「ストレスフル」という言葉はその学生には難しいと思ったので、さらに以下のプロンプトを入力してみました。
ストレスフルという言葉は、N3レベルの語彙ですか?ストレスにフルをくっつけると、語彙として難しすぎると思います。他の、もっと簡単で適切な語彙に変えてください。
すると、Claudeからの答えがこちら。
ご指摘ありがとうございます。おっしゃる通り、「ストレスフル」はN3レベルよりも難しい可能性があります。より簡単で適切な語彙を使って修正いたします。
以下が新しい修正版です:
「作文を始めてから一週間くらい経ちましたが、まだ半分ぐらいしか書けていません。実は、作文が終わらない本当の理由は、最近の生活がとても大変で、十分に準備できなかったからです。」
この修正では:
「ストレスフル」を「大変」に変更しました。「大変」はN3レベルでより一般的な語彙です。全体的な文の構造と他の表現は前回の修正を維持しています。この表現であれば、N3レベルの学習者にとってより適切だと思います。他に気になる点や改善したい部分がありましたら、お知らせください。
すごい。
打てば響く、という感じ。
なんだか優しさがあって(笑)、人間的な印象で、チャット(AIとのやり取り)も気持ちが良かったです。
ChatGPT3.5
次に、テキストの生成AIとして超有名どころChatGPTにも同じ文章を修正してもらいました。
驚くべき結果は、こちらです。
作文を書き始めてから一週間ぐらい経ちましたが、まだ半分しか書けていません。作文が終わらない本当の理由は、最近の生活がとてもストレスフルで、あまり準備ができなかったからです。
claudeのように丁寧な修正ポイントを並べてはくれず、これだけの返答。
非常にシンプルな返答ですが、・・・Claudeと修正部分の表現が驚くほどよく似ています。
学生が「すごくストレスになっています」という部分も、Claudeと同じ「ストレスフル」という言葉を使っています。
で、「ストレスフル」について、Claudeに入れたのとまったく同じプロンプトを入れてみました。
すると、
作文を書き始めてから一週間ぐらい経ちましたが、まだ半分しか書けていません。作文が終わらない本当の理由は、最近の生活がとても大変で、あまり準備ができなかったからです。
また、淡々と答えだけを返してきました。
そしてこれまたClaudeとまったく同じく、ストレスフルは「とても大変で」に置き換わりました。
つまり、
ChatGPTとClaudeは、同じような過程で同じように日本語を学習しているんだろうなあ・・・
ということが感じられました。
ただ、チャット全体の印象としては、ちょっとロボット的な冷たい対応だなと感じました。
Claudeの優しさみたいなものが足りない(笑)。
英語にしてみた。
で、修正文があまりに似ているので、英語にしてもまったく同じ英文になるのかな?と思い、それぞれが出した文を英語に直してもらいました。
ClaudeもChatGPTも、同じプロンプトで。
結果はこちらです。
まずClaude。
It’s been about a week since I started writing my essay, but I’ve only finished about half of it. Actually, the real reason why I haven’t completed the essay is that my life has been very difficult lately, so I couldn’t prepare well enough.
次にChatGPT。
I started writing my essay about a week ago, but I have only written half of it. The real reason I haven’t finished it is because my life has been very difficult recently, so I haven’t been able to prepare well.
ちょっとだけ個性が出てきました。
つまり、
日本語より英語の方がどちらも得意で、語彙・表現のバラエティも豊かに持っている、ということなのかなあ・・・
と、素人感想ですが、思いました。
もっともっといろんな添削で今後試してみたいと思います。
生成AIと人間
生成AIは素晴らしい日本語使いであることは分かりましたが、それでも大切なのは、生成AIによって出力された文を、最後に人間(教師)が見直してその学習者に本当に合った文になっているかどうかをチェックすることかな、と思います。
学習者は一人ひとり文体(には性格も出ると思います)やレベルが違います。
それに合わせたフィードバックができるなら理想ですが、それをどうやって生成AIに教えるのか・・・学習者の書いたものをたくさん、たくさん学習させればいいのかもしれませんが、その学習者の方も日々少しずつ進歩しているわけで・・・決して一か所にとどまっているわけではありません。
・・・そんなことまで考えだすと、素人日本語教師ではお手上げです。
というわけで、結局、普通の日本語作文の添削は、私(人間)が一人ひとりに合わせた指導を続けているわけですが。
とはいえ!
今回のように細かいことにこだわる必要のない一般的な修正であれば、生成AI、大活躍です!
確実にAIと日本語学習の距離は縮まりつつあると感じました。
おまけの画像生成
最後に、おまけです。Copilot(生成AIの一つ)で、日本語教師の絵を作成してもらいました。
これは・・・ひどい。(笑)
教師の着る謎の浴衣風ワンピース。
黒板の字は、いったいなんでしょうか。
そして右端の学生の頭上にある帽子?は、何の意味が!?
もちろん、画像生成AIはちゃんとやればもっともっと素晴らしい絵をいくらでも出力してくれますが、これはおまけなので、面白いのでこのまま出しておきます。
Copilot氏が考えた「黒板の前に立って、外国人の学生に日本語を教える女性日本語教師」です。
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