先日、東京都文京区内にある日本語学校事務局長が逮捕されたニュースが流れてきました。
(10月8日のニュースだったのですが、もうそのニュースはネット上では見えなくなってしまいました…)
書類を偽造し、中国人女性に「留学生」として在留資格を取得させ、
見返りに120万円のお金を受け取っていたそうです。
不法入国したその女性は京都のメンズエステ店で働いていて、
やはり逮捕されています。
メンズエステ…いわゆる風俗店だと思いますが、
風俗で働くのは本物の留学生のアルバイトであっても厳禁です。
こういうニュース、本当に本当に日本語教育業界にとっては大迷惑です!
世間の反応
このニュースについてSNSやYahoo!のコメント欄を見ているといろいろな意見がありました。
「こんなのは氷山の一角・・・」
「厳刑を!」
「近所に住む外国人はみんな非常識!」
「だから中国人は・・・」
「日本は偽留学生だらけ。もう入国させるな!」
等々、ざっと見ただけでも非常に過激な意見が数多くありました。
・・・まあ、予想通りです。憤りとともに、悲しくなりました。
確かに、不正入国や不正労働をしている外国人はいます。
それを助長する人もいます(今回はそれも外国籍の人のようでしたが、日本人でもいます。本当に大迷惑!)。
が、当たり前のことですが、在留外国人の多数派は悪事に手を染めず、地道に真面目に暮らしています。
その中に異分子が時々現れただけで、すぐに「だから外国人はダメだ!」なんて大声で叫ぶ人は、想像力が足りないのかな?と思います。
参考までに、こちら(法務省のPDFにとびます)をご覧ください。
これは、令和5年秋に法務省が日本人を対象に行った外国人との共生に関する意識調査の結果です。
9ページに外国人との日本での共生は《好ましくない》と回答した方の自由意見がいろいろ載っています。
想像すべきこと
もし私が外国に暮らしていて、その国にいる他の日本人が犯罪に手を染めたことがニュースになったら、
「その日本人と私を一緒にしないで!」と強く思うと思います。
そしてひたすら恥ずかしく、情けなく、さらに申し訳ない気持ちにもなるだろうと思います。
こういう犯罪は個人のもので、「○○(国)人」のものではないのですが、
きっと周囲の人は私が日本人というだけで「この人も悪いことをするんじゃない?」と
いう目で見るんじゃないかな、と思い、周囲の目が怖くなるかもしれません。(想像すべきは、そこです。小学校でも「相手の立場になって考えましょう!」って習いますよね……)
同じように、今回のニュースのせいで「どうせ他の日本語学校も悪い事してるんじゃないの?」と
思われるかもしれないわけで・・・大・大・大迷惑です!
その犯罪(者)を憎むのはいいと思います。
が、その犯罪者の母国(や、他の日本語学校)まで憎悪を広げてしまう、というのはおかしな話です。
日本ではいまだにヘイトスピーチ的な発言やコメントがそこここで見られますが、
(というか、日本の経済衰退と共に、むしろ増えてきた印象)
今回のニュースの件で偏見がさらに広がらないといいなと思います。
世間から見た日本語学校のイメージと、それを払拭するために
今回のニュースへの様々な反応を見て、
日本語学校というものを胡散臭い機関(お金のために、偽留学生をたくさん入国させる悪徳機関)だと思っている人が一定数いるんだなということがよく分かりました。
私達は、そのことを肝に銘じておくべきだと思いました。
そのイメージはどうやったら払拭できるんでしょうね…。
一般的な日本語学校の教職員ができることって何でしょうね…。
できることは限られていると思いますが、
少なくとも入学生を選ぶ時は、
勉強する気のない、ただ在留資格を得て日本でお金を稼ぎたいだけの「なんちゃって留学生」を入学させないよう、
目を光らせなければなりません。
入学生を増やすために入学希望者のチェックが甘くなっていないか?
良質な仲介業者を選定しているか?
面接(オンラインであっても)の仕方は適切か?
等は最低限、校内の複数の目で再検証すべきだと思います。
日本語学校に入学させた後
また、入学後の学生の適切な指導や在籍管理も非常に重要です。
SNS等のコメントの中には、近所の外国人の生活の非常識さを批判するものもありました。
日本語学校の役割として、来日間もない留学生に、
周囲の日本人とトラブルになりにくい暮らし方を伝授するのはとても大事なことだと思います。
(このことについては、コチラの記事『【日本語学校教職員】留学生にまず伝えるべき12の重要な生活ルール』にまとめました)
・・・こういうことを具体的にどのようにするのか? 他校ではどうしているのか? 等を知り、意見交換するような場所(勉強会とか研修とか)がもっともっとあればいいのにと思います。
(ありますが【→例えば、日本語教育振興協会のこのような研修など】、まだまだ少ないと思います)
これからの日本語学校
国の方針もあり、これからますます留学生の数は増えていくと思います。
我々は地道な努力を積み重ねることしかできません。
せっかく日本語学校(告示校)で働く日本語教師の資格が国家資格に格上げされ、
注目度が上がっている時です。
こんな一部の犯罪者のせいで、日本語学校に対する社会からの信頼度が下がることのないように心したいものだ…
と、このニュースを見て、感じました。
上でも紹介した法務省の「外国人との共生に関する意識調査」の結果には、
一般的な日本人が外国人とどのように普段接しているか?
外国人が地域社会に増えることをどう感じているか?
日本社会が外国人とうまく共生していくために、彼らに何を望んでいるか?
日本社会が外国人とうまく共生していくために、自分自身はどうしていきたいか?
等々、興味深い内容が盛りだくさんです。
また、最後には多様な自由意見も記載されています。
なかなか面白いものなので、ぜひ一度目を通してみてください。
さいごに
このニュースの映像では、警察の捜査員が建物に出入りする様子が出ていました。
そのドアには日本語学校の名前が書かれていました。
その学校で真面目に勉強している留学生や、真面目に授業をしている教師陣には
動揺が走ったことでしょう。
彼らが静かに落ち着いて授業ができているといいなと思います。
また、これを他山の石とするわけではありませんが、
自分の勤務校で妙なことが起きないよう、できるだけ縦横の連携を密にして、
妙なことをしにくい雰囲気にできればいいな・・・なんて思いました。
・・・口で言うはやさしく、実際には難しいことですが・・・でも、
「清潔できれいな街にすると犯罪が減る」と言われるのと同様、
「教職員がよく話し、雰囲気のよい学校にする」ところから・・・かな???と、
思います・・・。
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