
私は現在、某校で日本語教師として「作文・小論文」のクラス授業を担当しています。
レベルは中~上級程度の学習者達。
彼らは実に「個性豊かな」・・・かつ、かなりの率で「難解な」(苦笑)・・・文章を書いて提出してくれますから、毎回、採点や添削、フィードバックは困難を極めます。
そこで!
最近はAIの力を借りています。
もちろんAIに丸投げはしませんし、できませんが、私にとってはかなり優秀なサポーターになってくれています。
今記事では、作文小論文の採点添削やフィードバックに、私がAIをどのように使用しているかをまとめてみました。
ちなみに「作文の授業」に関しては、こちらの本「書くことを教える」(国際交流基金日本語教授法シリーズ)を一読されることをおススメしたいです。
2010年の本ではありますが、内容は充実しており、今読んでもいろいろな発見や気づきがあります。
具体的な授業アイデアも満載の、読み応えのある本です・・・安いのに!(笑)
まず、AIに指示を出す
まず、AIに【役割】を与え、今から【何を】【どんな目的で】【どうしてほしいのか】を指示します。
例えば・・・
あなたは日本語学校の中上級クラスで教える日本語教師です。【作文小論文】の授業で、「紙の本と電子書籍のどちらが優れていると思いますか。あなたの意見を400字以上600字以内で書きなさい」という課題を出しました。以下は学習者から提出された小論文です。これらを採点し、フィードバックをする必要があります。まず採点基準に沿って採点し、点数が高い方から学習者の名前を並べてください。採点基準は・・・です。次に、各学習者の小論文に、簡単なフィードバックをつけてください。
といった具合です。
そして、採点基準を明示します。
次に、入力
次に、学習者が提出した文章をAIに読み込ませる必要があります。
学習者がPC等で作文を作成提出してきた場合は写真も使えますが、
手書きしている場合は、その文章を私が手入力しなければなりません。
(または読み上げて音声入力も可能だと思いますが…私にはそちらの方が大変です)
この作業にはちょっと手間がかかりますが、どのみち読まなければならないわけですから、
打ち込みながら読んでいく、というイメージです。

私が担当しているクラスではそれほど長文の課題は出していません。
せいぜい400字から、長くても600字程度のものです。
(日本留学試験「EJU」の記述問題も400~500字程度とされています)
もちろん学生数にもよりますが、一般的な日本語学校のクラス人数分程度であれば、それほど長い時間はかからないはずです。
・・・ここまでやれば、AIは、一瞬で回答を出してきます。
学生の小論文をざっと採点してみる
次に、AIの回答を読む前に、私自身がざっと採点してみます。
手で打ち込んでAIに読み込ませた場合は、

Aさんは論理明快!構成も表現も分かりやすく具体例もあって素晴らしい!
Bさんは表現に少々難ありだけれど、全体の主張は一貫している!

Cさんのは読みやすいんだけど、論理が破綻しているなあ…前半と後半、明らかに矛盾している…
Dさんは文法も語彙も難ありすぎだなあ…意味不明な所がたくさんあるなあ…
・・・等々、いろいろ感じながら一度読んでいるわけですから、なんとな~くですが、おおまかな順位は頭の中で既につけられていると思います。
その上でもう一度読み直しながら採点基準に沿って点数をつけていきます。
AIと相談
それからAIと相談です。
私の経験上、AIと私の順位付けが大幅にズレることは、あまりありません。
採点基準を明確に指示しさえすれば(←ここは大事です!)、
AIはかなり的確に採点してくれるのです。
ただし、ちょっとしたズレはもちろん生じます。
私のつけた順位とひっくり返っている場合もありますし、
私よりずいぶん甘い(あるいは厳しい)点数になっていることもあります。
ですが、AIは、どういう理由でこの点数になっているかも説明してくれます。
ですからAIと私の出した採点結果がズレている場合は、AIの説明を読み、私自身の考えと合わせて再考します。
AIに私の考えを示しながらさらに相談することもあります。
時にはAIは、私にはなかった視点で学習者の作文の良さや問題点を指摘してくれることもあります。
それを加味した上で、最終の点数をつけます。
フィードバック
さて、作文を返却する際には、フィードバックという大切な作業があります。
これについても、AIは大活躍です。
正直言って、細かい文法や表現のフィードバックはAIはまだ苦手だと感じます。
文全体の添削もまだまだ任せられないなあと思います。
(学習者のレベルや書き方にある個性…のようなものに合わせた添削は、難しいと思います。現状では、ここは、普段から学習者の文章を読みなれている教師がやるしかない部分だと思います)
が、論理の流れとか根拠の示し方とか、そういった構成面に関しては結構いいフィードバックをしてくれます。
ですから、「学習者の文章に~という観点でフィードバックをしてください」と指示すれば、かなり的確な指摘を返してくれます。
もちろん、教師(私)自身も考えますが、
それとAIのフィードバックを合わせて、学習者に伝えるようにしています。
AIは、日本語教師仲間である!
・・・ここまで読まれた方は、

なんだ、そんなに手間がかかるなら、自分1人でやった方が結局早いじゃないか…
と思われるかもしれません。
・・・ある意味、そうかもしれません・・・が!
作文や小論文の採点や添削というのは真剣にやろうとすると、本当に手間と時間がかかるものです。
数人の日本語教師で同じものを読み、点数を持ち寄って時間をかけて議論できる・・・
という環境なら、それは素晴らしい日本語学校だと思います。
が、そういう学校はほとんどないのではないでしょうか?
一人の授業担当者が、悩みながら一人で採点する、孤独な作業になると思います。

それなら、やはりAIにサポートしてもらって、
自分の「主観」だけに頼らない、
より「客観性」がある・・・かどうかは明言はできませんが、少なくとも複数の目で見るのと似た方法で採点した方が、
適切な採点・フィードバックができるだろうと思います。
つまり、AIに自分以外のもう一人の日本語教師になってもらうということです。
AIに相談することで、学生への指導にも自信が持てるようになると思います。
・・・ということで、今回の記事では作文小論文の授業でどのように私がAIを使っているかをご紹介しました。
まだ活用していない方、ぜひ参考にしていただければと思います。
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