日本語学校は日本全国にありますが、特に首都圏には山ほどあります。
歴史の長い学校、新設校、大規模校、小規模校、在籍学生が多国籍の学校、一国の学校・・・。
また、いわゆる「ブラック」と言われる学校の噂も、残念ながらチラホラ耳にします。
では、数多くの日本語学校の中から、どのように働く学校を選べばいいのでしょうか?
どんな学校を選んではいけないのでしょうか?
・・・そんなこと、勤める前に分かるならだれも苦労しないよ・・・という声が聞こえてきそうですが、、、
ここでは、私が思う学校選びのヒントをまとめてみました。
経営母体は? その学校のトップは?
まず、その学校の経営母体を調べてみることをお勧めします。
経営母体に、塾や学校など、教育系事業の経験やノウハウがあるか?
また、学校のトップである校長に、日本語教師の経験があるか?
教育がどんなものか、その意義と現実を知っている経営母体・学校のトップがいいと思います。
そうでないと、とんでもない要求をしてくることがあります。
「なんのために高い給料払って専任雇っていると思ってるの? 授業なんて極力専任だけで回せ。一日45分の8コマなんて、毎日でもできるでしょ?・・・なに、一週間に何コマまでって基準がある? そんなもの、無視してしまえ! ばれるわけないだろ!」
「テスト? プリント教材? そんなもん既成のものを使えばいいんだから、教師が時間かけて作る必要ないでしょ!」
「学生のためにちょっとぐらいの遅刻や居眠りなんて大目に見てあげなさいよっ」
・・・あげればキリがありません。
また、教育に熱意のない学校は、この事業が「もうからない」「割に合わない」と判断すれば、けっこうあっさり手を引きます。
日本語学校は新設校もたくさんできますが、その陰で消えていく学校や名前が変わる学校も多々あります。
全部がそうだなんて言いませんが、その中にはかなり、「なんだ、思ったより旨味がないじゃん」ということで経営を手放す学校もあるのでは・・・と思っています。(少なくとも私は複数の学校でそういう話を聞いたことがあります。)
ちなみに日本語学校の校長になる条件として、
(校長の資格)
法務省「日本語教育機関の運営に関する基準」より 930002749.pdf (moj.go.jp)
9 日本語教育機関の校長は、教育に関する識見を有し、かつ、教育、学術又は文化に関する業務
に原則として5年間以上従事した者であるものとする
とあります。
校長は必ずしも「学校の教員として現場に立った経験がある」というわけではない、ということです。
実際、私もそういう校長に会ったことがあります。そういう人の下で働くのは・・・苦労します。(だからこそ率先していい改革をしてくれる人ならいいんですけどね・・・)
契約書は?
契約書は一般社会なら交わすことが当たり前。日本語学校業界でも最近はちゃんと交わす所も増えてきたと聞きます。
が、まだ「契約書」がない学校が(たくさん)あります。
「契約書」を出さない学校・こちらから「契約書」がほしいと言ったときに「ありません」と明言する学校はもちろんのこと、「ええと・・・それについてはまた後日・・・」的に言葉を濁す学校。
あり得ません。
やめておきましょう。
主任は?
模擬授業や面接のとき、主任の先生と会うことになると思います。
そのとき、全身全霊でその先生を感じ取ってください!!!
話し方、雰囲気、他の教職員との会話の様子・・・。
その中に「ん?」と疑問に感じることがあると、その学校で働くうちにだんだん辛くなってくるかもしれません。
主任の存在感、力は、学校の中で大きいです。(対学生ではなく、対教職員での話です)。
その人と自分が合うかどうかは働きやすさに直結します。
また、、、言い方が難しいのですが、この主任の「個性」というか、「クセ」が強すぎる場合もあります。
いい意味で変わっている人(詳細は省きますが、そういう人もいます)ならいいんです。
でもよくない意味で変わっている人・・・あっちこっちで他の先生の悪口を言ってみたり、相手によって言うことをコロコロ変えてみたり、イジメみたいなことをしかけて煽ってみたり、、、何度かそんな幼稚な話を聞いたことがあります。そのせいで先生が集団でやめた例も実際に知っています。
また、主任の張り切り度と言えばいいのでしょうか、やたら元気だったり(←います!)、逆に落ち着きすぎていたり(疲れているのか、やる気がないのか?)、、、そういうテンションにもご注意を。私自身は、自分と似たテンションの人と一緒の方が、仕事はしやすいです。(これは人によるかもしれませんが)。
面接日に一度会っただけで自分と主任の相性を見極めるのは難題ですが、できる限りよく観察してみることをおススメします。
※こちらの記事『日本語学校の教務主任(=主任教員)・4つのタイプ』もぜひお読みください!
初級の教科書は何?
使用教材は何かを確認しましょう。
ホームページに出ている場合もありますが、特に初級の場合、「みんなの日本語」なのかそうでないのか、というのは重要かもしれません。
養成講座出身の場合、「みんなの日本語」で勉強された方が多いと思います。
文型積み上げ式のこの本に慣れた方が、まったく違う、たとえば場面をまず提示して学習者たちに話をさせながら進める「できる日本語」で授業を組み立てていくのは、慣れるまでは大変だと思います。
もちろん自分の勉強にはなりますし、教師としての力量を上げるためにもいつかはチャレンジするべきです。
でも新人が最初にチャレンジするにはハードルが高いような気がします。準備が大変なので。
それはすなわち、それに付き合わされる学生の方にとっても大変ってことです!
ですから、特に日本語教師デビューの新人さんの場合、使用教科書によっては応募も慎重に考えた方がいいと思います。
※この点については、こちらの記事『【日本語教師】新人は『みんなの日本語』!スキルアップは『できる日本語』で!』に詳しくまとめましたので、ぜひご覧ください!
教科書は支給される?自腹で購入??
教科書をどのように準備するかも確認しましょう。
無料支給なのか、貸与なのか、購入補助が出るのか、全額自腹なのか。
基本的には仕事に使う道具なのですから無料支給がいいとは思いますが、教材をもらってもすぐに辞めていく先生もいますから日本語学校としてはキビシイですね。
貸与ならいいのですが、その場合、最後に返すと思えば教員は書き込みもしにくくなります。(そうすることで暗に自腹で買うことを教員に促しているとしたら、イヤらしいなあと思います!)
個人的には
「自分で買いますが、一部購入費を補助していただけるとありがたいです」
と思います。
参考までに⇩⇩⇩
授業で使う教科書は支給されていますか? | NIHON MURA(日本村)日本語教育 Note
(「日本村」サイトより)
しょっちゅう求人が出ていないか?
これは簡単に調べられますので、ぜひ。
求人サイトで過去をさかのぼれるだけさかのぼりましょう。
しょっちゅう求人情報が掲載されているとしたら、
「先生がどんどんやめていく」もしくは「なかなか集まらない」
学校です。
また、一気に大量の教員を募集している場合も要注意です。
一気に大量の教員が辞めたのかもしれません。何か問題があったのかもしれません。
(だいぶ前ですが、東京23区外の某学校で、ある問題(詳細は省きます)が起き、新聞に小さな記事が出ていました。その時はその学校から大量の教員が辞めたそうです。そしてその後、かなり派手に大量の教員を募集していました)
そうではなく、もしかしたら「大量の学生が入学することになったから」大量の教員が必要になったのかもしれません。
が、それはそれで心配です。
そんなに一気に学生数を増やしてしまって本当に学校業務が円滑に進むのでしょうか・・・。
そういう募集の仕方をする学校が全部問題を抱えているなんて思いません。
でも、少しでも長く気持ちよく働ける学校を探したい場合は、周囲の日本語教師に何か知らないかリサーチするなどして、慎重に考えましょう。
意外とこの業界は狭いです。いろんな情報ネットワークを持っている先生が、どの学校にもいるものです。
適正校か?
「適正校」というのは、学生の在籍管理がしっかりできているとして入管が選定する学校のことです。
学生から行方不明者(不法在留者)を多く出してしまった場合(学校の学生数に対する率が決まっています)は選定されません。
適正校は一年ごとの調査結果によって変わります。
また、令和5年4月、入管の「教育機関の選定について」が更新され、「適正校」がさらにクラスⅠとクラスⅡという、二つのランクに分けられるという内容が新たに追加されています。
教育機関の選定について | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
(出入国在留管理庁サイトより)
(専任講師の場合、学校に来なくなってしまった学生がいると大変です。バイト先に確認したり、家を訪問したり、友人から聞き取り調査をして行きそうな場所をあたってみたり、、、プロの探偵じゃないんですから、行方不明者捜索なんてうまくいきっこありません!
また、いなくなってしまう学生というのはだいたいアルバイトをたくさんしています。疲れています。授業中は寝がちです。授業も大変になります)
ですから、できることなら非適正校は避け、クラスⅠの適正校で働きたいものです。
が、残念ながらこれは簡単に知る方法はないようです。
リスト(適正校の一覧もしくは非適正校の一覧)があればいいのですが、私は出会ったことがありません。(もしあるのでしたら、どなたか教えてください!)
ですが、学校が「適正校」に選定された場合、自校のサイトに誇らしげにそれが記載されていることもありますので、要チェックです。
ただし!
最後に身も蓋もない話を書きますが、、、適正校になるためにズルをしている日本語学校も、なくはないかもしれません・・・。まさかまさか、出席率をごまかしたりしている学校はない、とは、思いますが・・・思いますが・・・・・(ゴニョゴニョ)
非常勤講師契約か、業務委託か?
専任講師ではない働き方の場合、日本語学校では「非常勤講師」と呼ばれることが多いですね。
ですが、その契約が「非常勤講師」としての雇用契約なのか、それとも「業務委託」なのか、、、
正直、普通に働く分にはあまり変わらないと思います。
でも実は違います。
非常勤講師契約の場合、条件によって社会保険料を負担してくれたり、有給が取れたり、といったメリット(学校側にとっては負担)があります。
業務委託の場合、確定申告のときに経費としてパソコン代なども計上できる・・・と聞いたことがありますが、実際にはどうなんでしょう?(が、面倒そうですけど・・・。私はやったことがないのであくまでイメージです。)
注意点として業務委託の場合、支払われるのはその業務自体をきっちりすること(だけ)に対する報酬となりますから、その準備にいくら時間がかかっても「残業代」は発生しませんし、もちろん「有給」なんてものもありません。雇用契約ではないので労働法に守られるということもありません。
逆に非常勤講師の場合は労働法にしっかり守ってもらいましょう!
具体的には、授業後に学校に残ってテストの採点や学生の質問に答える時間、会議に出席する時間、などは残業代として請求できるものです。
有給も、条件が合えば(半年以上継続勤務している、等)、週一日の授業しか担当していなくても取れたりするのです。(もちろん少ないですけどね)
上記のような労働者の権利は、学校側から申し出てくれることは、少ないです。
権利を要求するのは常に労働者側から・・・ということなのかと思います。
が!
だからといってあまり強く出ると、面接は気まずくなりそうですし、既に勤務している場合は学校との関係が悪くなる心配もありますね。
本来要求する相手は学校の経営陣なのでしょうけれど、だれに最初その話をするかというと、面接の場合はその面接官(経営陣でないことも多い)でしょうし、既に働いている場合は現場で一緒に仕事をしている、あるいはお世話になっている専任講師だったりしますから、なかなか切り出しにくいかもしれません。
とはいってもナアナアにするのも違うと思います。
言うべきことはどんどん言った方がいいと思います。そのときにきちんと話を聞いてくれる学校か、それともその話を濁して逃げる学校か、は大事な見極めポイントだと思います。
大事なのは話し方と、相手との信頼関係ですね。
面接では話し方に気を付け、既に働いている場合は普段から同僚とのコミュニケーションはしっかり図っておきましょう!
専任講師を味方につけておいて、損はないです。
こんな学校は要注意!【まとめ】
【選ぶべきでない学校とは!】
要注意
・経営母体、学校トップが「教育」に詳しくない学校
・契約書のない学校、契約書の話から逃げる学校
・しょっちゅう求人が出ている学校
やや注意
・主任教員のクセが強すぎる学校
・初級テキストがメジャーなものでない学校(特に新人講師は注意!)
※もちろん、学校の方針としてそういうテキストを選んでいるわけですから、その学校自体に問題があるわけではありません。あくまで初めて教壇に立つ場合はハードルが高いのでは…という話です!
・テキストを当然のように自腹で買えと要求する学校
・非適正校(例外あり)
・非常勤講師契約の場合、残業代や有休の話を拒否する、もしくは濁そうとする学校
少しでもヒントになることがあればうれしいです。
日本語学校は本当にたくさんあります。
すばらしい学生、魅力的な先生、すてきな学校と出会えることを、東京の片隅から祈っております!
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