ビジネス日本語なら段階別のこのテキスト3冊!

現役日本語教師の方

日本の少子化は止まりません。日本は働き手を求めています。

そして有難いことに、日本で就職したいと思ってくれている日本語学習者・既に日本で働いてくれている学習者がたくさんいます。

今回は日本語教師の立場から、これまで私が授業やレッスンで実際に使ってみて「良いな」と思った「ビジネス日本語」テキストを3冊、紹介します!(すべて中級レベル~のテキストです)

なお「ビジネス日本語」は、入社後はもちろん、就職活動の中でも身に付けていくことができるものです。

そこで今回は、学習者が【就職活動】→【内定後】→【入社後】のどの段階にいるのかによって選べるよう、段階別に、厳選3冊をご紹介します!

まず、就職活動をして内定を勝ち取ることを目指す人向けのテキストです。

『外国人留学生のための就職活動テキスト』(アークアカデミー)【amazonにとびます】

これは、完全に就職活動にフォーカスしたテキストです。

大学や専門学校、日本語学校で勉強しながら就活をする人に向けたテキスト仕様だと思いますが、

相手の状況に合わせてアレンジすればプライベートレッスン、中途採用を目指す人にも十分使えると思います。

内容は、

就職活動の流れや仕事の探し方・身だしなみ・会社の人事担当者との話し方やメールのマナー・正しい敬語の使い方・履歴書の書き方やポイント・面接の流れや注意点・内定後にどうすればいいか・辞退する場合のマナー等・・・

そして「敬語の基本」という章や「日本語学習のページ」というコーナーもあります。

また、就職活動に特有の語彙もリストアップしてくれています。

たとえば『第1課 仕事の探し方』では、

「募集要項、求人、応募、エントリー、履歴書、人材紹介、待遇、雇用形態」

といった言葉がキーワードとしてあげられています。

その説明をすると自然と就職活動の流れも説明していくことになりますから、

教師側にとっても非常に扱いやすいテキストになっていると思います。

なお漢字は総ルビです。

一部注意点があるとすれば、専門学校で使う場合の、「業界研究」などのパートの取り扱い方でしょうか。

現状、専門学校卒業の場合、『技術・人文・国際業務』の在留資格は、専門学校で学んだ専門性と就職先での仕事内容が一致していなければ与えられません

ですからこのテキストの中にある「業界研究」などはあまり必要ないかもしれません。

(日本で(あるいは母国で)大学を卒業した人には役立つ内容だと思います。)

が、この中にももちろん有益な情報はありますから、

必要な部分を取捨選択する必要がありそうです。

私が使用したのは初版のテキストですが、今年の春に新版が出たようです。

だいたい似た内容のようですが、

オンライン面接の内容が新たに加わっているようなので、

より時代に合わせた形になっているのでしょう。

これは、就職活動だけでなく、就職後の日本語まで勉強したい、という人向けのテキストです。

『伸ばす!就活能力・ビジネス日本語力』(長沼スクール・東京日本語学校編)【amazonにとびます】

このテキストは、まず就職活動についての基本を押さえます。

一冊目に紹介した教科書はまるまる一冊、就職活動にフォーカスしていましたが、

それをコンパクトにまとめた感じの内容がテキスト前半にあります。

その後、日本で働く上で身に着けておくべき社会文化能力や社会人基礎力を向上させるための内容があり、最後に「仕事の日本語力」として敬語や電話の受け答え、会議やビジネスメールについて学ぶ、という流れのテキスト構成です。

ロールプレイのネタも豊富に提供されています。

某専門学校でクラス授業を受け持っていたとき、

このテキストでカバーされている「社会文化能力」や「社会人基礎力のパートがとてもいいなと思いながら使っていました。

「社会人文化能力」のパートには、

たとえば日本の地理や産業についての基礎知識クイズがあったり、

「社会人基礎力」のパートには

チームビルディングとしてのゲームや、ケーススタデイとしてクラス全体で話し合うべき状況のネタが紹介されていたりします。

実際に行ったところ熱心に取り組んでくれました。

ということで、このテキストは教室での授業で扱うのに向いているテキストです。

独習やプライベートレッスンには不向きだと思います(工夫次第ですが)。

これは、就職活動ではなく、就職後にフォーカスした内容のテキストです。

『留学生・日本で働く人のためのビジネスマナーとルール』(日本能率協会マネジメントセンター)【amazonにとびます】

このテキストは、各セクションごとにまず、入社後に学習者が遭遇するであろう様々な場面が具体的に示されます。

そして各ケースで、どうしてそうなったのか? どうすればよいと思うか?

などをクイズ形式で学習者に考えさせます。

その後、「理解しましょう」というパートで

各場面での日本人の一般的な対応方法やマナー、考え方、などが示されます

「理解しましょう」の文章はそれほど難しくはないものの、

独学では理解(文法や語彙というより、中身の理解)が難しいかもしれません。

やはり日本事情を補足してくれる教師がいる方がいいテキストだと思います。

ケーススタディの例として、例えば。

『就業時間の後に飲みに誘われ、毎回断っていると「付き合いが悪い」と言われてしまった。どうしたらいいの?』

とか、

『上司や先輩から仕事を教えてもらうとき、真面目に聞いているのに「ちゃんと聞いてるの?」と言われることがあるけれど、どうして?』

とか、

『同僚の家族に不幸があった。通夜や葬儀ではどうしたらいいの?』

とか、

・・・盛りだくさんです。

私は授業では全部扱う時間がなかったので、ところどころピックアップして使っていました。

話題によっては学習者の価値観にパラダイムシフトが起きていたようです。

日本人のビジネス文化が理解できますし、

入社前にこれを勉強しておいて良かったのではないかと思います(私は専門学校の最終学年で使用しました)が、

もちろん入社後の学習者にも十分使える内容です。

私が授業で使用したのは初版ですが、これも去年改訂版が出たようです。

コロナ後の各所でのオンライン化拡大に合わせて内容が更新されたとのことですが、

基本は変わっていないようです。

もし私が今プライベートやグループレッスンで「ビジネス日本語」というタイトルの時間を担当することになったら

たぶんこの本をチョイスすると思います。

(もちろん学習者の目標やレベルを確認した上で合いそうなら、ですが)

「理解しましょう」(や、そのあとに「理解を深めましょう」というパートもあります)の部分で学習者たちと話し合い、

その中で日本語力(会話力や、語彙力、読解力)も自然とアップさせることもできると思うからです。

このテキストに加え、随時一般的な会話の聞き取りや語彙、シャドーイング等を組み合わせながらレッスンを進めていくかなあ・・・と思います。

いかがでしたか。

今は「ビジネス日本語」を冠したテキストがいろいろと出ていますが、

中にはどうも使いにくそうだなあ(実際に使ってみたけれど使いにくかったなあ、学生の力は伸びなかったなあ)と思う本もあります。

その中で、上記の本は非常に役立ったと思います。

・・・ビジネス日本語の授業って、難しいんですよね。

一般的なジネス系の日本語テキストでは、典型的なビジネス会話(挨拶とか、定型的な受け答えの表現とか)が紹介されていますが、

それらをいくら理解し暗記しても、いざ実際の場面になると応用がきかず、話も発展させられない、、、

という困った状況が起きるように思います。

それよりも、

日本のビジネスマナーを理解することと、普通の日本語(ビジネス日本語、と銘打った特別なものでなく)の勉強を行して行う方が、結果、ビジネス場面にしっかり通用する人物になれる!

・・・というのが、私の持論です。

皆さん、どう思われますか???

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