私、日本語教師をやっています!
へえ!じゃあ、英語ができるんですね!
・・・「日本語教師」という職業がだいぶ世の中に認知されるようになってきた今でも、
まだそう言われることがあります。
日本語教師にとって、英語力はどの程度必要なのでしょうか?
この記事では、一般的な日本語学校を職場とする日本語教師の英語力(広く言えば外国語能力)について考えてみました。
そして、英語力がなくても日本語教師ができる理由・英語力があることの大きな利点、等について具体的にまとめます。
得意じゃない人の方が多い気がする…
まずあくまで「私の周囲調べ」になりますが・・・
これまで国内の日本語学校や専門学校などで出会ってきた日本語教師の方を思い出すと、
「英語は話せない」、という人の方が多かった気がします。
もちろんペラペラの人もいますよ。外国生活の経験豊富な人、かつて日常的に英語を使う仕事をしていた人など。そこから日本語教師という仕事に興味を持って転身したという人ともたくさん出会いました。
でも、数としては「英語はそんなに得意じゃない」もしくは「英語は苦手!ほとんど分からない!」という人の方が多かったと思います。
ましてや英語以外の外国語となると、たま~に、「中国に留学していました」「韓国語を勉強中です」…のような人と出会うぐらいでした。あとは「夫が○○人です」という人が、夫の母語を話すとか。
つまり一般的に日本語教師の英語力(外国語能力)は、そんなに高くはない、と言っていいと思います。
(私自身は若い頃に英検の準一級を取得しました。その時はそれなりに頑張った記憶があります。が、その後なが~い年月の間に、勉強をしたりしなかったりの波を何度か繰り返して、今。正直言ってまったく自信はありません!)
でも。
そんな人(私を含め…)でも日本語教師はできてしまいます。
外国語力がなくてもできる理由
日本国内の日本語学校は、複数の国籍の学生が机を並べる多国籍クラスが多いです。
多国籍クラスでは、直接法を用いて授業を行うことが一般的です。
直接法:特定の外国語(媒介語)を使わずに、日本語だけで日本語を教える方法
(間接法は、英語などの媒介語を使って日本語を教える方法のことです)
クラスの全学生が共通して完全に理解できる言語がないわけですから、
なんとか日本語で授業を進めるしかありません。(プロ日本語教師の腕の見せ所です)。
・・・たまに、部分的に英語を使って説明する先生もいるようですが、ちょっと危険です。
英語が母語ではない学生が誤って理解してしまう可能性があるからです。
(※なお、どう考えても誤解しようのない言葉や表現(というものもあります)だと確信できるなら、媒介語を調べて提示するほうが効率的な場合もあります。そこは学習者ファーストの視点で考えて臨機応変に…)
また、日本語を日本語そのもので教える、つまり、いわゆる「日本語シャワー」を日々学習者の全身に浴びせることで、学習者はより早く日本語の環境に慣れることができます。
これは、日本語の聴解力・運用力を早くアップさせるためにも非常に効果的です。
・・・つまり、英語などの外国語ができなくても、教師は日本語の授業ができるわけです。
・・・一応。
※それでも全く英語ができないと不安だと言う方には、こんな本もありますよ。日本語教師として一冊持っておいてもいいかもしれません。お守り・安心材料にはなると思います!
『こんなときどう説明する?日本語を教えるためのやさしい英語表現 英語が苦手でも大丈夫』くろしお出版(https://amzn.to/3Cl95iK)
外国語力はあった方がいい理由
しかしながら、外国語能力がある日本語教師には大きな強みがあります。
自分自身が外国語を学んだ経験があると、
学習者はどんなところでつまずきやすいか? 何が難しいのか?
を実感として理解できます。
また、
どんな授業が分かりやすく、楽しいのか? どんな自習方法が効果的なのか?
といった学習者としての視点を持っていますから、それを学習者に還元することもできます。
さらに、
外国語学習の困難を乗り越えた先に、どんな楽しいことがあったか?
という具体的な話をすることで学習者を励ますこともできます。
私はアメリカでこうやって英語を学んだことで、たくさん友だちができて、アメリカでの生活がすごく楽しくなりました。その人たちが日本に来たときは一緒に各地を旅行して・・・
・・・例えばそんな実体験を教師が生き生きと楽しそうに語ることができれば、
それは学習者の心に響くのではないでしょうか。
教師への親近感が増すと思います。
そしてもう一つ、特定の外国語の知識があれば、
その外国語母語話者はなぜそういう間違いをするのか?
を分析することができます。
例えば中国語母語話者が助詞の「の」を不要な所によく入れてしまうのは、中国語だとそこに「的」が入るからで、「的」を「の」と変換してしまうんだな・・・のようなことが分かるわけです。そういった分析ができると、指導にも効果的に活かすことができます。
実際の授業では
でも、日本語がまったく分からない人に、どうやって日本語で教えるの?
・・・これも日本語教師がよく受ける質問です。
初級クラスではできる限りシンプルな、易しい日本語をゆっくり話しながら授業を進め、
写真、絵、レアリア(生教材)、ジェスチャーや時にはちょっとした芝居など、
視覚に訴えるものを多用します。
名詞も文型も、見ればはっきり分かるような状況(場面)を学習者に示すことが大事です。
誤解されるのを防ぐため、写真や絵の準備は慎重にする必要があります。
以前も書いたことがありますが、私は「鳥」という言葉を教えるのになぜか「すずめ」だけが描かれた絵カードを見せながら教えてしまったことがあります。当時、日本の街中で見かける鳥といえば、すずめかカラスでした。すずめのことを「鳥」と言うと思った学習者がいたかもしれません・・・。(※詳しくは、コチラの記事『【日本語学校】メインテキストの新出語彙の教え方≪初級編』をどうぞ!)
初級の学習者には「迷わせない」こと。
これが最重要だと思います。
目で見て分かりやすい状況(場面)を作って、
可能な限り既習の言葉や表現だけを使って、
意味を理解させていくのです。
・・・日本語学習を始めたばかりの初級クラスで
日本語だけの説明で「分かった!」を積み重ねるのはとても難しいことですが、
その経験は確実にその後の日本語学習のモチベーションアップにつながると思います。
・・・初級クラスはそういう意味で非常に大事です。
ですから、本当は初級こそベテランの先生が教えるべきだと私は思っています。現実は違いますが・・・。
(中級以上のクラスでは、ある程度学習者が自走できるようになっているはずです)
※初級クラスを新人教師が教えるなら「みんなの日本語」を、でもスキルアップするなら「できる日本語」をお勧めします・・・という記事は、こちらです。
※初級クラスをはじめ、日本語を教えることは抜群に楽しくて魅力的だ!と思う理由をまとめた記事は、こちらです。
教師としての成長
学習者に日々「勉強してください!」と強いる教師は、
やはり自身も日々勉強を続けるべきだと思います。
勉強にもいろいろありますが、外国語を学ぶ経験は、教師としての成長にも直接つながると思います。
新しい言語を学ぶことで、あるいは既習の言語をより深く学びなおす中で得る知識やスキル、新しい視点(上記のような学生の立場で授業を点検できることや、コミュニケーションスキルなど…)は、授業のさまざまな場面で活用することができます。
※なんでもあっても、勉強をしない人は教師には向かないと思います。それについては、コチラの記事『日本語教師に向いてないかも!?•••残念な日本語教師たち』にもまとめてありますので、ぜひお読みください!
結論
教師自身が何か外国語を勉強した経験があることは非常に大きな強みになります。
授業で使う使わないに関係なく、やはり外国語学習は続けるべきでしょう・・・
これが結論です。
頑張りましょう!私も頑張ります!
・・・これから日本語教師を目指してみようかな?と思われている方は、ぜひ【TCJ】の講座もご検討ください。私が「推し(?)」の先生が講師をされている講座です。(詳しくは、こちらの記事にまとめています!)
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