【日本語教師】国語辞書を一冊買うなら?~おすすめは新明解国語辞典!

日本語教師をめざす方

三省堂の「新明解国語辞典」は、とてもユニークな辞書として有名です。

日本語教師なら一冊は国語辞典を手元に置いておくべきだと思いますが、もしこれから購入するなら、是非これをお勧めしたいです。

ところどころに編者の個性が垣間見られる、おもしろい辞書なのです。

私、学生時代からウン十年、愛用しています!

この中からいくつかの語彙をピックアップしてみました。

※なお、私の手元にあるのは第三版。80年代に出されたものです。

古っ!と思われたでしょうか?

なんとアラフィフの私、高校時代から愛用しております!

まずは名文だなあと思う語彙を。

世の中

世の中:同時代に属する広域を、複雑な人間模様が織りなすものととらえた語。愛し合う人と憎み合う人、成功者と失意・不遇の人とが構造上同居し、常に矛盾に満ちながら、一方には持ちつ持たれつの関係にある世間。

愛し、憎み、成功したり、失意を味わったり・・・でもみんなで持ちつ持たれつ。それが「世の中」なんですね。味わい深い名文ではないでしょうか?

ちなみにgoo辞書では「人々が互いにかかわり合って生きて暮らしていく場。世間。社会。」だそうです。非常にアッサリしています。

凡人

凡人:自らを高める努力を怠ったり功名心を持ち合わせなかったりして、他に対する影響力が皆無のまま一生を終える人。〔マイホーム主義から脱することのでいない大多数の庶民の意にも用いられる〕

他に対する影響力が皆無のまま一生を終える・・・私も凡人。夫も凡人ですが、凡人同士いたわり合いながら、それなりに幸せにつつましく生きている人生が、なんだか愛おしくなります。

語釈に若い人が出てくる語彙もちょっとおもしろいと感じました。

かっこいい

かっこいい(恰好いい):(若い人たちから見て)彼らの感覚・趣味を反映していてすばらしい。

え!?私、アラフィフのオバサンですが、しょっちゅう「あの俳優さん、かっこいいなあ!」なんて思っているんですが。・・・言葉のハードル(?)が下がったのか、今の中年(というか、私?)が年齢不相応な言葉遣いをしてしまっているのか・・・?

世の習い

世の習い:正義感に燃える若者にとっては矛盾・不合理と見える事であっても、慣行上認めざるを得ない事柄。

なるほど。「こんな矛盾はおかしい!」と訴える正義感に燃える若者に対して「仕方ないでしょう。これが世の習いなんだから」と言えば納得・・・させられるのかな!?それにしても「正義感に燃える若者」って素敵な表現!

女と男の語彙については、かなり時代を感じる語釈になっていて逆に新鮮に感じます。

女・男

女:①〜省略〜
②一人前に成熟した女性。(やさしい心根や優柔不断や決断力の乏しさがからまり存する一方で、強い粘りと包容力を持つ)

男:①〜省略〜
②一人前に成熟した男性。(狭義では、弱い者をかばう、積極的な行動性を持った人を指す。~後略~

今なら異論を唱える人が大勢いるでしょう。上の②の定義に従うと、私は「女」ではないのかもしれません!

ちなみに。「女らしい」のところには、下のようにあります。

女らしい:やさしさなど、いかにも女性特有の性質を持っている様子だ。

なお、Goo辞書の「女らしい」は・・・

女らしい:気性・態度・容姿などが、いかにも女であると思えるようすである。女性のもつべきと考えられている特徴を備えている。女性的である。

となっています。その「気性」や「態度」がどのようなものなのか、Goo辞書の説明では具体的に分からないので、言葉のイメージも湧きにくいです。

・・・ところで新明解国語辞典で「嫉妬」をひくと、こうあります。

嫉妬:自分より下であると思っていた者が自分よりも多くのものをもっていたことに気づいた時の、むらむらとしたねたみの気持。 例文:女は嫉妬深い。

むらむらとした~気持ち。そして、この例文。・・・なんとも言い難いです。(笑)

この辞書を見ながら思うのは、とても生き生きとしているなあ、ということです。

真面目な辞書ですから、大多数の語釈は他の辞書と大きく違うわけではないのですが、その中にも、その語彙の本質(もちろん時代によって言葉の意味は変化するので、これは古いなあ、と思うものもあるわけですが)にグイグイ迫ってやろうという強い意気込みを感じます。読む側は刺激され、いろいろ考えさせられます。

時にユーモアもあり、クスッと笑わせてくれる辞書でもあり、、、

つまり、読み物としても一流だなあと思うのです。

私が愛用しているのは上に書いた通り第三版。赤い辞書です。

最新版は第八版だそうです。新しい言葉がたくさん追加されているようです。また、古い版はかなり「攻めた」説明があった分いろいろ問題点を指摘されたのか、変わってしまった箇所もあるのは残念です。

とはいえ今でも辞書としてのユニークさでは群を抜いているのではないでしょうか。

日本語教師として学習者に言葉の意味を説明する際にも、この辞書の語釈をできるだけ事前に読んでおくようにしています。

日本語には似た意味を持つ言葉がたくさんあります。日本語学習者も上級になると、その違いを質問してきたりします。こちらも必死に考えますが、この辞書に助けられたこともあります。日本語教師の力強い味方になると思います。

三省堂「新明解国語辞典」、ぜひお手元に一冊!

こちらの記事【日本語学校】新出語彙の教え方≪中級、上級編≫でも、新明解国語辞典について触れています。「肉欲」という語彙の語釈をご紹介していますので、ぜひご一読ください!

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