日本語学校の留学生は、卒業後、大学や専門学校に進学します。
中には技人国(技術・人文知識・国際業務)や特定技能の在留資格で就職する人もいます。
どの場合でも必ずついてくるのが「面接試験」です。
この記事では、日本語学校での面接指導についてまとめてみます。

面接で大切なこと
私は以前、専門学校の入試で面接官を担当していたことがあります。
その際の経験から、留学生を見る際に特に大切だなあと思うことは、以下の点です。
一字一句、立派な文章をまる覚えしてきていないか?
日本語の会話に自信がない人ほど、これをやりがちです。
志望動機や将来の目標など、よく聞かれる質問に対する答えを、日本語学校の先生の力を借りながら必死に覚えてくるんですね。
でも、そこに出てきた内容について面接官がちょっとつっこんで質問してみると、答えられません。
これでは点数はあげられませんね・・・。覚えてきた努力は認めますが。
文章ではなく、ポイントとなる言葉をいくつか紙に書き出し、それを覚えておく方が有効だ、とアドバイスするのがいいと思います!
質問に対して、必要十分な答えを返してくるか?/沈黙してしまわないか?
面接官が【A】という質問をしたとき、【a】と答えずに、【bcdef…】のような答えをする人がいます。
聞かれたことに対して、まっすぐに必要なことだけを答えられないのです。
これは、質問の意味がよく分からなかった人、もしくは、会話が得意または大好きで、読み書きのペーパーテストよりも会話で点数を稼ごうとする人、に多い印象でした。
また、逆に面接官の質問に対してしばらく黙ってしまう人がいます。
私が勤めていた学校では、10秒以上黙ってしまった場合、次の質問に移ることになっていました。
もし質問の意味が分からなかった場合は、聞き返すことができればいいのですが、それもできない場合、面接点は大きく減点されていました。
ふだんの授業では、学生が教師の質問にまっすぐ答えなくても、そしてダラダラと長い答えを返してきても、教師は「これも日本語を話す練習になっているのだから」と容認して聞いてしまうことがあると思います。ですが面接対策としては、「聞かれたことだけに、まっすぐ簡潔に答えを返す」ことに意識を向けさせた練習も必要です。
日本的なマナーを知っているか?
入学試験には、スーツ等、ちゃんとした(常識的な)服装で臨んでもらいたいものです。
また、香水を控えたり、口ひげを剃ることなども、日本的なマナーです。
さらに、ノックをしてドアを開けた後、ドアを静かに閉めるとか、椅子に腰かけて足を組まないとか、もし机と椅子がある場合、立った後に椅子を机の下に入れて戻すとか・・・そういう配慮が見られると好印象です。
また、これは面接時ではなくペーパーテストの時でしたが、試験会場で、帽子をかぶった状態で席に着く人もいました。日本語学校では何も注意されてこなかったのかもしれません。
異文化理解(自分が留学している日本の文化に敬意を払い、理解し、尊重する態度)というのは、大事なポイントだと思います。
ふだんから日本のマナーを教えておくことは大事です。特に日本で就職しようと思っている人には、早い段階から慣れてもらう方が本人のためになると思います。これは日本語学校で日ごろから指導すべきことかなと思います。
面接試験でよく聞かれること
次によく聞かれる質問内容です。(ここでは主に進学関連の質問をあげます)
自己紹介をしてください
⇧あまり長々と話す必要はありません。簡潔に。ただし、グループではなく個人面接でじっくり話を聞こうとする雰囲気の場合、面接官がいろいろ質問をしてくるかもしれません。そういう場合に備えて、自分の性格や長所・短所などが言えるよう、自己分析もさせておくべきです。(もちろん、どうしてそう思うのかも含めて、具体的な経験も話せるようにしておくとベタ―です。それらが自分の志望分野と関係ありそうなエピソードだとさらに良いです!)
どうして日本に留学しましたか?
⇧「日本の技術は進んでいるからです。」「日本に兄/姉がいるからです」では、弱いです。日本の技術が進んでいると思ったできごとを言えるようにしておく必要があります。「兄/姉」がいるから困った時に助けてもらえると思ったのは事実かもしれませんが、それは何か他の留学理由があって、その後に付け足すことです。メインの留学理由としては不適切です。
本校の志望動機は?
⇧オープンキャンパスなどで知ったこと、印象などを交えて話せるようにしておくといいでしょう。
この学校でどんな勉強をしたいですか?
⇧進学先の学校は、学生と学校のミスマッチを防ぎたいと思っています。この人はきちんと学校の勉強内容のことを理解した上でこの学校に入りたいと思っているのか? 入学後、本当に熱心に勉強するか? それを知るための大事な質問です。学校のホームページやパンフレットをしっかり読み込ませておきましょう。
将来の目標は?
⇧専門学校の場合は特にですが、そこで勉強した専門分野をしっかり生かせる会社で働く場合しか、就労ビザはもらえません。ですから、入学前に自分の将来を具体的にイメージさせておくことがとても大切です。
※例えば【専門学校で観光の勉強をしました。その間ずっとスーパーでアルバイトをしていました。そうしたらスーパーの店長から専門学校を卒業したらぜひうちで働いてください、正社員で内定を出しますから。と言われ、観光業界より、慣れたスーパーで働きたくなりました。】➡ビザはおりません!
今、アルバイトはどんなことを、何時間ぐらいしていますか?
⇧留学生は「資格外活動許可」を取ってアルバイトができますが、一週間に28時間以内というルールがあります。(長期休み中は40時間可能です)それを守らない人は入管から在留資格を取り消されてしまいます。専門学校はかなり神経をとがらせてチェックしています。
入学したら、学費と生活費は誰が払いますか?
⇧しっかりした経費支弁者がいればいいのですが・・・。「全部自分で払います」という場合、それを一週間28時間以内のアルバイトで本当にできるのか? 働きすぎているのではないか? という問題が浮上します。
(日本語学校の出席率が低い場合)その理由は?
⇧「留学生」というのは学校で勉強するための在留資格なのですから、当然、ここはチェックされます。
その他【日本の第一印象は?/日本のどこが好き?/日本で好きな文化は?/最近関心のあるニュースは?・・・】
⇧学校によって、面接にかける時間は違います。中には30分ぐらいかけてじっくり聞きます、と明言している学校もあります。そういう場合、どんな方向から質問が飛んでくるか分かりません・・・。
面接指導の実際の流れ
実際の面接指導では、以下のような流れで行っています。
上記の質問事項について各自紙に書かせ、内容をチェック。
⇩
その中からポイントになる言葉だけを抜き出してメモを作らせる。
⇩
それを覚えさせる。
⇩
実践練習を繰り返す。
教室に入るところから、面接が終わって出ていくところまで含めた通しの練習も何度かしておくようにします。
これを一人ひとりにしていくわけですから、かなり時間と手間がかかります・・・。
面接練習に使えるテキスト2選
最後に、面接指導時に参考になるテキストを三つご紹介します。
シャドーイング 日本語を話そう! 就職・アルバイト・進学面接編
⇧シャドーイングの本なので、授業用にはもちろん、面接受験者本人が自学もできます。口がなめらかに回るようにする練習になります。
また、この本一冊で就職、アルバイト、進学、という三つの面接をカバーしているというお得な本でもあります。
⇧専門分野に関する質問と、それに対する答えの例が複数あり、特に大学志望の人に参考になる本だと思います。
留学生には、「日本的な発想」がない人が多く、非常に個性的な答え方をする人が一定数います。
良い方向に転べばいいのですが、悪い方向に転ぶことも・・・。
もちろん、内容は本人が変えなければいけませんが、一度こういう本で「一般的にはどう答える人が多いのか」を知っておくことは、留学生にとって損にはならないと思います。
さいごに
日本語学校で学ぶ留学生は、今この難しい時代に、日本を選んで留学してくれた人たちです。
彼らのが夢を日本で実現させるお手伝いができる仕事は、本当にやりがいがあるなあと日々思っています。
彼らは日本で理不尽な思いをすることもあるかもしれませんが、そこを日本語教師がしっかり支えることで(あくまで適正な仕事の範囲内で、が前提ですが!)、彼らが日本を好きになってくれたらいいなあ、と思っています。
日本全国で進学指導に携わる日本語教師の皆さん、一緒にがんばりましょう!!
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