Yes = はい? Yes ≠ はい? 首を横にふって「はい」??

現役日本語教師の方

英語←→日本語の訳として、、、

 YES=はい
 NO=いいえ

というのが一般的だと思います。

が、時としてこの関係は崩れますよね・・・。

たとえば「これ、好き?」という質問なら簡単です。

「はい」なら「好きです」ということですし、

「いいえ」なら「好きではありません」の意味です。

悩む必要はありません。

ところが、「これ、好きじゃないの?」への答えって・・・

はい? いいえ?

もし英語なら、”Don’t you like this?

・・・これにどう答えればいいのでしょう?

これは日本語話者が英語を学ぶときも悩むことです。

日本語学習者も混乱することがあるようです。

そして、その混乱を目の当たりにした日本語教師はさらに悩みます・・・。

りんご、好きじゃないの?」とあなたが聞いたとします。

そのとき相手(日本人)が無言で首を縦にふったら、

「好きじゃない」の意味だと思います。

が、相手がもし無言で首を横に振ったらどうですか?

相手が好きだと言っているのか、好きではないと言っているのか・・・。

それは相手の表情によって理解するのではないでしょうか。

もし相手がとても嫌そうな表情をして首を横に振ったなら、

「ああ、嫌いなんだな」と解釈すると思います。

でも、嫌そうな表情をしないで、ただ首を横にふったら?

「あ、好きなんだな」と理解するのではないでしょうか。

次に、相手が首を振ることなく、言葉だけで答えたとします。

「りんご、好きじゃないの?」に対して相手が「いいえ」と答えたら。

・・・それは、「好きです」の意味だと解釈する人が多いと思いでしょう。

逆に「はい」と答えたら、「好きではありません」の意味になると思います。

りんご、好きじゃありませんか?

いいえ。(好きですよ。)

はい。(好きじゃありませんねえ。)

同じように、「やらないの?」と聞かれて、

「はい」と答えれば「やりません」の意味で、

「いいえ」と答えれば「やります」の意味になりますよね。

でも、英語(だけではありませんが)ではちょっと違います。

同じ質問を英語でしてみると、答え方が日本とは違うパターンになるようです。

Don’t you like apples?

に対してYESで答えるなら、

Yes, I do.(=I like apples).“=「いいえ、好きですよ」。

NOで答えるなら、

No, I don’t.(=I don’t like apples).“=「はい、好きではありません」。

つまりこの場合、

日本語の「はい」は”NO”に、「いいえ」は”YES”になっています。

これ、本当に混乱しがちです。

つまり英語は、相手の質問の言葉(形)はどうであっても、内容(中身・意味)に対してYESかNOで答えますが、

日本語では内容よりも、相手が言った質問の形自体に注目し、それに沿った答え方をする、ということです。

しかし、日本語教師として日本語学習者と話していて、

いちばん理解に迷ったり違和感を覚えたりするのは、

学習者が声を出さずにただ首を振るときだと思います。

日本語教師(私)
日本語教師(私)

昨日の日曜日、遊園地に遊びに行くと言っていましたよね。行きましたか?

学習者
学習者

いいえ、行きませんでした。

え? あれ? 行かなかったの? 本当に?

・・・・・(無言で首を横にふる!)

・・・ん? どっち?

と、一瞬思います。

まずちょっとした違和感を覚え、

その後に、表情などを見て、ああ行かなかったんだなと理解はしますが。

「本当に?」という質問に対して、

「本当」であることを肯定するのですから、

首を縦にふってくれたら分かりやすいのになあ

と、日本語母語話者としては感じるのです。

最後にもう一度まとめておきます。

一般的には、【YES =はい】で、【NO=いいえ】でOKです。

が、質問の形が「ないですか?」や「本当に?」等のときは要注意です。

英語は、相手の質問の言葉はどうであっても、内容(意味)自体に対してYESあるいはNOで答える。
「Do you like this?」でも「Don’t you like this?」でも、好きなら「Yes」で、嫌いなら「No」。

日本語では、内容より、言葉の形にそって答える。
つまり「これ、好きですか」なら「はい、好きです」か、「いいえ、嫌いです」。
「これ、好きじゃないですか」なら「はい、好きじゃないです」か、「いいえ、好きです」。

日本語学習者は、英語(あるいは母語)の表現方法を引きずって「はい」「いいえ」を逆に答えたり、首を縦に振るべきところで横に振ったりする場合があるわけです。

教員は学習者の意図する意味を正しくとらえるとともに、日本では一般的にはこうするよ、ということを丁寧に伝えていくべきだと思います。
(一般の社会で日本人に誤解されると気の毒ですから・・・)

※「これ、好きじゃないですか?」と文面で書くと伝わりにくいですが、一般的な疑問文として相手に「質問」する場合を指しています。
 イントネーション(文末の「か」まで下がっていく)や文脈によっては、「これ、好きじゃないですか」が質問ではなく「確認」になる場合もあります。そのケースでは、「はい、好きです」と答えることもありますね。・・・ややこしい!

私が学習者にこのことを伝える際は、練習問題を出します。

次のようなシートを準備し、(   )に「はい」か「いいえ」を入れてもらいます。

① Aさん「猫、好きですか」
  Bさん「(     )好きです」
  Aさん「じゃあ、犬も好きですか」
  Bさん「(     )好きではありません」

② Aさん「週末、どこかに行きましたか」
  Bさん「(     )行きました。ディズニーランドに行きました」
  Aさん「じゃあ、ミッキーマウスに会いましたか?」
  Bさん「(     )会いませんでした」
  Aさん「え、一度も会わなかったんですか?」
  Bさん「(     )一度も会いませんでした。残念です」

③ Aさん「Bさん、今度のパーティー、行かないんですか?」
  Bさん「(     )行きますよ」
  Aさん「あれ? さっきCさんから、Bさんは行かないと聞いたんですけどね」
  Bさん「ああ、仕事の予定があったんですよ。でもそれがキャンセルになったので、行けることになりました」
  Aさん「そうですか。じゃあ、一緒に行きましょう」

シートが完成したら、学習者同士で「首振り」を含めて会話練習をしてもらいます。

※②の最後の言葉、「はい」ですから、首は縦にふってほしいところです!

この首振り会話、途中で混乱して笑い出す人もいます。

意外と楽しそうにやってくれると思いますよ!

★★★ただし、言語というものは基本的にはその場その場での文脈に依存している、あるいは支配されながら理解されるものです。また、個人差も当然あります。ですから、今回この記事で述べたものは、あくまで一般的なことです。当然、例外はあるということを、最後に一言つけ加えておきます。

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