日本語学校に限りませんが、就職には「面接試験」が必ずあります。
それまでまったく知らない人とこれから同じ職場で顔を突き合わせて働いていくわけですから、面接官は当然、信用できる人、そして一緒に気持ちよく働いていけそうな人を選びたいと思っています。
では具体的にはどんな点を見てそれを判断しているのでしょうか?
これは書類審査を突破して面接に呼ばれた以上、絶対に決めたい!そう思っている方向けの記事です。
これまで2校で面接官をしてきた経験から、面接官が何を見て採用を決めるのか、そのポイントをまとめてみました。
どんな人が採用されなかったかも出てきますので、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。
ただし長くなりますので、お急ぎの方は、蛍光ラインの所だけ飛ばし読みでも結構です!
面接官がチェックするポイント
某日本語学校では、チェックシートにチェック項目が並んでいてそれを各面接官が点数化して評価し、合計点を記入。
その後、全面接官の点数の平均点を出していました。
若干手を加えていますがチェックシートはだいたい以下のようなものでした。
身だしなみ | 5 4 3 2 1 0 | 備考欄 |
姿勢 | 5 4 3 2 1 0 | |
質問の理解 | 5 4 3 2 1 0 | |
話し方 | 5 4 3 2 1 0 | |
声の大きさ | 5 4 3 2 1 0 | |
言葉遣い | 5 4 3 2 1 0 | |
視線 | 5 4 3 2 1 0 | |
熱意 | 5 4 3 2 1 0 | |
向上心 | 5 4 3 2 1 0 | |
履歴書との整合性 | 5 4 3 2 1 0 | |
合計点 | 点/50 |
もちろん日本語学校では模擬授業の点数とも合わせて評価するわけですが、面接の評価項目に関してはおそらく一般企業とほとんど同じではないかと思います。
これらの項目を、日本語学校らしい視点から評価していきます。
なお、面接試験でどんな質問をされるのかについては、こちらの記事にまとめてあります。
以下、各項目について解説していきます。
身だしなみ
服装は、男性も女性もスーツがいいでしょう。
社会人経験者の場合、大学新卒の就活生が着るような「いかにも」なリクルートスーツである必要はありませんが、そういうスーツで臨む人もいる中、あまりに「フツー」の服では、浮きます。
明らかに面接官の心象は悪くなります。
逆に、「フツ―」の、あるいはオフィスカジュアル的な服装の人達(なぜか日本語学校の面接にはそういう方が来がちです)の中できちんとスーツを着ている人がいれば、面接官にとっては好印象です。
日本語学校への就職をなめていないな、という本気度が伝わります。
迷うくらいならスーツを着て、革靴(女性はパンプス)をはいて、A4サイズの紙を折らずに入れられるカバンを持ちましょう。
髪型も含め、清潔感も大事です。
服にはアイロンをかけ、夏場であれば汗ジミにも気を付けましょう。
ネクタイはきちっとしめましょう。
不潔でだらしない印象の人は、まず採用されません。同僚にも学生にも嫌がられますから。
姿勢
椅子に腰かける姿勢で、その人の筋力が分かる・・・と言っていた先生がいます。
猫背の人は、自分の体を支える力が弱いのだそうです。
日本語学校では多くの場合、一日に45~50分の授業を4回、午前午後通しであれば8回、担当することになります。
その間、ほとんど立ちっぱなしということもよくあります。
筋力、体力、大事です。
背もたれによりかからず、背中を伸ばして姿勢よく腰かけましょう。
質問の理解
時折、面接官の質問と答えがずれる人がいます。
面接官の質問をしっかり聞き、質問の中身を理解し、的確に、直球で返すようにしましょう。
次の「話し方」の項目とも重なりますが、的外れな答えを返す人は、なぜか元会社員かつ自信満々な人が多かったです。
そういう人はかなりの率で日本語学校での仕事をなめてかかっています。
質問に答えているうちに、自分は前職でこんなにすごい仕事をしていた、その経験ではこうなんだ、、、といった方向へ長々と脱線したりします。
そういう人はきっと授業でも同じことをするだろうと思われますから、点数は低くされてしまいます。
ある時、日本を代表する大手企業を定年退職後に日本語教師の資格を取って面接にいらした方がいました。
すばらしい経歴でしたが、質問に対する答えが長く、その中に質問と関係ない話がかなり混じっていました。
当然、不採用でした。
面接官が静かに聞いてくれているから「好感触」と思ったら大間違いです。
お気を付けください。
話し方
先生の個性が出るところなので、これにはどんな話し方がいい、という正解はありません。
自分の考えを分かりやすく相手(面接官)に伝えられれば、どんな話し方でもいいと思います。
思いますが、他の先生も私もNGだと思っていた話し方を二つほど。
滔々と自分語りになってしまう。(NGの理由は上記「質問の理解」をご覧ください。)
・・・前職を定年退職されたオジサマで数人お会いしたことがあります。丁重にお断りしました。
言葉の端々で学生を子ども扱いする意識が見えてしまう。
教師は学生の親ではありません。
初級の学生は日本語がまだ上手ではないため、ともすると子どものように思えることは確かにあります。
でも、違います。
母国で高校を卒業して一人で異国でチャレンジしている立派な大人。年齢は下でも対等な相手です。
・・・年配の女性で時折お見掛けしました。
上記の「質問の理解」と、この「話し方」の項目で、コミュニケーション能力が判断されると思ってください。
声の大きさ
これは、そのままですね。
授業で通らないような声はNGです。
逆に時々やたら元気な大声の人もいますが、これもNG。
冒頭で書いたように「一緒に気持ちよく働ける人」を選びたいと面接官は思っています。
教室での様子はもちろんですが、いつも教員室でどんな風に他の教員とコミュニケーションを取るのか、ということも想像しながら面接をしています。
その面接室の広さと、面接官との距離から考えて、適切な声の大きさに調節してください。
言葉遣い
これも、そのままですね。
なんてったって日本語の教師ですから。
敬語や語彙の選択など、面接にふさわしい言葉遣いを心がけましょう。
視線
これ、大事です。
個人的にはここ、すごく大事だと思ってチェックしていました。
面接官が複数いるとき、
質問をした人以外の目をまったく、一切、見ない人がいます。
これは、授業中に教室のいろんな学生を見まわせるかということに直結すると思っています。
面接官の側から言うと、自分は一生懸命相手の目を見て言葉を聞いているのに、自分のことを一顧だにしてくれないというのは、自分の存在を無視されているような気分になります。
そう思わせないことが大事です。
教室でも学生にそう思わせないことが大事ですから。
質問に答える時はキョロキョロせず質問者を見ながら答えますが、ほかの面接官にも時折目を配りながら話すのがいいでしょう。
テレビで、複数のホストが一人のゲストを迎えて話を聞く形の番組がいろいろありますよね。
見ていると、ゲストが一人のホストの方ばかりを見ながら話しているのを見かけることがあります。
その度に、あれはよろしくない態度だなあと思います。
もしお時間あればぜひそういう番組をチェックして、我が身を振り返ってみてください。
熱意
日本語教師として働くことへの熱意。
そして、この学校で働くことへの熱意。
両方必要です。
しっかり面接の準備をしてきたか、そしてこの仕事を会社勤めより楽勝なものだと思っていないか。
この辺は、少し話しているとなんとなく分かります。
また、この学校のことを調べてきたか。最低限、ホームページぐらいは見てきたか。
これも、話していると分かったりします。
向上心
日本語教師は、常に勉強が必要です。
日本語の勉強(文法分析とか)はもちろん、他にも勉強することはたくさんあります。
たとえば昨今では、日本語学校でもデジタル化が急激に進み、ICTを授業に活用する学校も増えました。
ところが、
「自分はそういうの苦手だから」と言って昔ながらの紙教材をいまだ大量に使い続けている先生も実在します。
それは、だめです。
新しいことを学ぶことから(面倒で)逃げているだけだと思います。
学生だって「苦手な漢字を必死に覚えた」り、「難しい文型を一生懸命理解した」りしていますし、私達教師はそれを学習者に求めているのです。
なのに自分は逃げる・・・これは、だれが考えてもよろしくないですよね。
今時の学習者のニーズに合った方法、学習者が最大限メリットを享受できる方法を追求すれば、おのずとICTに行きあたるはずです。
これは一例としてですが、今の時代であれば「向上心」があるかどうかは、ICTの話を少しでもできるかどうかで判断できると思っています。
再びコロナ禍などで学校に学生が来られなくなった時、それでも学習者に学習機会を提供し続けられるスキルとしても、これからの日本語教師には必要ですよね。
さまざまな方面に興味を持ち、向上する意識を持っていることが伝わるようにしましょう。
履歴書との整合性
当たり前のことですが、履歴書の内容と面接での答えが違っていると、大きなマイナスです。
どちらかが「嘘」ということになってしまいます。
嘘を言うつもりがなくても、ちょっと勘違いして履歴書と違う答えを言ってしまう、ということもあり得ます。
面接中に履歴書を見ながらの質問が何かしらあると思います。
その時に慌てないよう、
自分で書いた履歴書はコピーを取っておいて、面接前に見直しておくことをお勧めします。
履歴書については、別記事にまとめますので、そちらもよろしければご覧ください。
番外編
番外編として、その人が常識がある人かどうかは常にチェックされていると思ってください。
一般的な会社勤めと同じです。
求人情報を見て問い合わせの電話をする時。履歴書の書き方や送り方。面接前後の様子。
日本語学校では一つのクラスをチームで教えることが多いので、お互いに信用できる人でないとうまくいきません。そして常識が欠けている人は、なかなか信用されないものです。
日本語学校が採用したくない人
これまで書いてきたことから、
日本語学校が採用したくない人 = 採用されにくい人 = 日本語教師に向いていない人
はどんな人かをまとめます。
- 人の話を聞かない人、理解しない人。
(自分語りが大好きな人は、きっと教室でもそうしてしまいます。学生の話をろくに聞きません。) - 日本語学校の仕事を簡単だと思っている人、なめている人。
(面接に臨む服装や態度で分かってしまいます。日本語学校の仕事は、本気でやると大変です。) - その場にいる人達全体を見ることができない人。
(教室の学生全体を見まわすことができない人は、面接で分かります。) - 成長が止まっている人。
(日々勉強。自分のバージョンアップは、大事です。) - 常識のない人。
(会社勤めがうまくいかなくてやめました、という人は、たいてい日本語学校でもうまくいきません。)
日本語学校は常に人手不足だと言われています。ですからどんな人にもチャンスはあるんです。
でも、自分が採用されたからといって、そこで自信過剰にならないでください。
もしかしたら「他に適任者がいないから仕方なく採用された」のかも、しれません。
もちろん違うかもしれませんが、そういう可能性も考えて、常に自分をブラッシュアップする謙虚な姿勢って大事じゃないかなと思います。
自戒を込めて・・・。
1人でこっそりシミュレーション!
いろいろ書いてきましたが、就職の面接試験というのは、そんなに「慣れています」と言う人はいないと思います。
(いや、自分は百戦錬磨だ!という人がいたら、それはそれで・・・ちょっと・・・どうして?と、勘ぐってしまいます。)
ということで、一度本番前に練習しておくといいかと思います。
おススメは、答えている自分の音声を録音して後で聞き返すことです。
きちんと話せているでしょうか?
下のような1人でできる面接練習動画を作りました!
もしよければ、下の動画でシミュレーションしてみてください!
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