断然、一般企業への就職をお勧めします!
迷っている方にはもちろん、
迷うことなく新卒で日本語教師になると決めている方にも、です!!
せっかく日本語教師になるという将来の目標を定めて一生懸命に勉強してきたのに、
なぜ遠回りをしなければならないの?
と、思う方もいることでしょう。
そんな方にこそ、ぜひ以下をお読みいただきたいと思います。
日本語学習者のニーズ
なにより一番の理由は、これです。
日本語学校生はもちろん、
企業に勤める人、趣味で習う人など、
学習者の多くは大人です。
(日本語学校の学生は、自国で高校以上を卒業してきています。)
大人は「日本の」言語を学びながら、
同時に「日本の」ビジネスマナーや文化、社会、日本人の常識を知りたいと思っています。
・・・正直言って、大学新卒の方にそういったものが十分に身についているとは思いませんし、
ましてや学習者が満足できるように伝えることは難しいと思います。
本を読んだりネットで検索したりして知識を得ることはできます。
が、なにしろ社会経験が浅い先生に教えられても、説得力はあまりないでしょう。
実際に筆者(立派なオバサンです)自身が新卒だった頃を思い出してみても、
今、新卒の若者を見ていても、そう思います。
※ただし、日本のアニメやJ-POP等を知りたいという学習者もいます。そういうニーズには若い人の方が応えられるかもしれません。でもそれだけを知りたいと言う学習者は少ないと思います。
一般企業に勤務すると、
学校や学生時代のアルバイトでは学ばなかったことをたくさん学ぶことになります。
いろんな面で成長します。
それはいざ日本語教師としてデビューした後に、
その人の厚みとして、授業の深みとして、生きてきます。
授業に深みが増せば、学習者からの信頼も得やすいでしょう。
この「学習者からの信頼」というのは非常に大事なものだと思っています。
信頼関係が築けなれば、
学習者のモチベーションが上がりません。
あるいは下がってしまいます。
そういう状況では、
いくら必死に準備して素晴らしい授業をしたつもりでも、
肝心の学習者の力はなかなか伸びないと思います。
資格は無効にならない
大学時代に努力して取得した日本語教師としての資格。
これは、一般企業に就職した後も無駄になりません。
現在「登録日本語教員」の資格の話が国によって進められていますが、
文化庁より出された最新(2023年8月末)の情報によると、
今現在大学生で、
かつ、
資格を取得した方・取得のための勉強中の方・これから勉強を始める方は、
一度企業で働いてから日本語教員になることができます。
登録日本語教員の資格を得るための「経過措置期間」が設けられていますが、
既に資格を取得した人は令和11年3月末日までに、1年以上、
法務省の告示校(一般的な日本語学校)で勤務すればいいことになっているからです。
つまり来年(令和6年3月)卒業予定の方は、
少なくとも3~4年は一般企業で働くことができるということです。
まだ取得していない人は、さらに長く、
令和15年3月末日まで「経過措置期間」が延長されます。
※ただし、国は現在もこの登録日本語教員についてワーキンググループで話し合いを続けています。これから何かが変更される可能性も大いにあります。(実際、一度決定したかのように語られていた「公認日本語教師」という名称も、気が付くと「登録日本語教員」という名称に変わっていました)➡追記:2024年4月より、実際の運用が開始されました。
常に最新情報(←文化庁HPより。2023年8月30日のものです)はチェックしましょう。
既卒での就職が容易
「新卒」。
この言葉が、日本国内の就活市場ではどれだけ強いカードであることか。
それは一度社会に出てからでないと実感できないかもしれません。
だからこそ、声を大にして「新卒」の方にお伝えするのです。
誰が何といおうと今の日本社会で就職活動をする際の最強のカードは「新卒」です。
「何も知らない、手垢のついていない、伸びしろだらけの、体力のある、(しかも賃金の安い)」若い人を雇用し育てるという観念が多くの一般企業に根付いています。
徐々に変化しているとはいえ、今はまだまだ就活は「新卒」天国なのです。
ところが、日本語学校への就職の場合、まったくそんなことはありません。
むしろ新卒より社会人経験のある人が好まれる傾向すらあります。
つまり日本語教育の世界というのは、既卒者の就職が容易な業界なのです。
(一般企業でうまく勤められなかったから日本語学校に転職したい・・・という人は除く!)
ですから、わざわざ「新卒」で手に入れられるはずの「よりどりみどりの一般企業で勉強する機会」を捨てることはありません。
もったいないです。
日本語教師になる前の「修行」だと思って、
ぜひ一般企業でいろんなことを身に付けてください。
※ちなみに、日本語学校から一般企業に転職するのは、一般企業から日本語学校へ転職するよりずっとずっと難しいと思います。
また、かつてと比べると日本経済は衰退していると言われますが、
まだまだ日本で学びたい、働きたい、という人達はたくさんいます。
家族を日本に帯同する人達もたくさんいます。
つまり日本語教師という職には今後もしばらく需要があります。
一般企業で働いているうちに日本語学校の仕事が少なくなってしまった・・・なんてことは、
ないと思います。
お金・・・
日本語学校勤務では、お金はたまりにくいです。
お給料が少ないところが多いですから。
日本語学校より低い給与水準の中小企業もあるかもしれませんが、
一般的な企業の平均給与は日本語学校のそれより高いです。
そして日本語学校で最初から専任講師になるのは、難しいと思います。
まずは非常勤講師として雇用され一定の期間経験を積み、
専任として業務を任せられると評価され、
たまたまその時に専任講師の空きがあれば専任講師になれる・・・
そんな道筋を想像してください。
最初の非常勤講師の間は、
1コマ(45分~50分程度)2000円ならとてもいいスタートだと思います。
(1800円位〜が多いのではないでしょうか※首都圏)
でも、その1コマを作るために膨大な準備時間が必要になります。
初級日本語学習者の多くは、本当にほとんど会話ができない状態で来日します。
その人たちに分かるような授業を組み立てるのですから、当然です。
人によるかもしれませんが、
一週間に16コマ(4コマ授業を4回分)できればすごいと思います。
※ 日本語学校の多くは、午前クラスと午後クラスに分かれていて、両クラスとも4コマ授業を半日で行っています。午前クラスの学生は9時ごろから12時過ぎぐらいまで、午後クラスの学生は1時ごろから4時過ぎぐらいまで授業を受けて、帰宅します。
2000円×16回×(仮に1か月)4週 = 128000円。
しかも1か月に4週ない月もあります。夏休みや春休み等、無給の月もあります。
これでは、生活はキビシイです。
新人の非常勤講師は他のアルバイトをかけもちして、
やっと生活できる(でも切り詰めた生活)、
という環境になると思います。
(そのアルバイト先で日本語学校の教え子と同僚になる・・・という笑えない話もあります)
ですから、そうなる前に少しでも貯金があった方がいいです。
精神的な余裕につながります。
最後に
・・・ところで。最後に。
一般企業で働くうちに、ひょっとすると、そちらで強いやりがいを感じるようになるかもしれません。
その時はその時です。
せっかく日本語教師の資格を取ったのにもったいない!と思うかもしれませんが、
そもそも、「資格」というのは本人の生活(人生)をより良くするために取得したはずです。
「資格がもったいない」という思いに縛られて、やりがいを感じた仕事を捨ててしまっては、
人生自体がもったいないことになってしまいます。
柔軟な気持ちでいたいですね。
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