日本語教師のフリートークには、「会話授業(レッスン)」として行うものと、
普段の授業の中でちょっとしたブレークとして行う雑談のようなものとがあります。
日本語学習者との会話を行う上では、どちらにも共通するコツのようなものがたくさんあります。
当記事でまとめてみましたので、ヒントとして何か参考になればと思います!
傾聴力が最重要!
まず、前提として。
日本語教師にとって、学生とのフリートーク(会話、雑談)で最も大切なのは
「傾聴力」だと思います。
教師よりも、学生が話すことが重要です。
教師の役割は、話題を提供して学生に話すよう促し、その話をよく聴き、
あいづちや共感の言葉、質問を通じて発話を活発化させることです。
主人公は学生。教師は名脇役。
・・・と言う前提で、お読みください。
教師はときどき、自分の話をしていこう
授業中、自分のプライベートな話を全くしない先生がいるようです。(学生の噂で聞きました)
が、こういう先生は学生にとっては親しみにくいと思います。
親しみを感じない先生には、学生も話しにくく感じるでしょう。
逆に、学生に対して自分の話ばかりする先生も問題です。
かつての同僚(60歳前後の男性教師でした)で、さまざまな国に駐在していた会社員時代の手柄話を授業でしていた先生がいました。
その先生は学生向けの語彙コントロールもあまりしていなかったのか、
学生は話の内容をほとんど理解できなかったそうです。
日本語学校の学生は、世界に羽ばたくビジネスマン志向の学生ばかりではありませんから(というか、ほとんどいない)、
理解できたところでポカーン…だったかもしれません。
上記二人の先生はどちらも、学生が話しやすい雰囲気を作ることができない先生と言っていいでしょう。
理想は、普段から適度に、適切な内容で、自分の話をする先生です。
そういう先生は学生から親しみを持ってもらえ、自分からも話をしてみたい、という雰囲気を作れると思います。
フリートークのテーマ(ネタ)
フリートークのテーマには、学習者が興味を持ちやすい話題を選びましょう。
私の経験上、どのレベルでも学生が興味を示しやすいなと思うのは、
料理や食材の話。国内観光地の話(特に美しい写真が撮れるところ)。海外旅行の話。学生時代の話。恋愛話。家族の話。お金の話。そして自分の失敗談。
などです。
特に若い人は、教師のプライベートな話に興味を持つことが多いので、喜んで聴いてくれます。
そして学習者の方からもその話題に関連したことを(時にはそこから発展して)いろいろ話してくれます。
そうなればしめたもの。
教師は相づち・共感・質問等でできるだけ「聞き役」に回り、
学習者に「気持ちよく話をしてもらう」ための雰囲気づくりに徹しましょう。
なお、上記の話題はどのレベルでも楽しめる話題ですが、中級後半以上の学生ともう少し真面目(?)な話題で話し合いたいのなら、議論ができそうな話題を出すといいでしょう。
例えば、
人生で一番大切なものは何だと思うか。学歴社会についてどう思うか。子どもがAIを使うことの是非。安楽死についてどう思うか。等々・・・
ただ、クラス授業の場合は、全員が同じ話に同じ熱量で食いつくとは限りません。
全体の様子を見ながら話す量を調整しつつ進めることが大切です。
・・・けっこう難しいです、これ。特に一部の学生「だけ」がものすごく盛り上がって話している場合。一生懸命話してくれている学習者と、全然その話題に興味なさそうにしている学習者、どちらにも目を配りつつ、さりげなく方向転換する・・・かなり高度な技だと思います!私もまだまだ苦手です・・・。
もちろんプライベートレッスンなら、学習者の興味関心をしっかり把握し、ピンポイントでそこに合わせるように心がけます。
学習者が日本史が好きなら日本史のネタを集めておいたり、ジブリの映画が好きなら自分も何作か見ておく、等のような教師側の努力が必要です。
対等な関係を築く
学習者は、学校・教師にとって大切な「お客様」です。
とはいえ日本人がかつてよく言っていたような「お客様は神様です!」は、もう古い価値観です。
大切なお客様ですが、基本的な立場は対等です。
「上から目線」ではなく、かといって「下から」見上げるような、学習者をおだてるような会話でもなく、あくまで自然に、対等に。
日本人同士の一般的な心地よい会話や、感じの良い営業マンと客のような関係を意識すると良いと思います。
自己フィードバック
一度スマホで自分の授業を録音して聞き返してみると、自分の話を客観的に捉えることができます。
内容はもちろん、声質や話し方の癖、スピード、雰囲気などが分かります。(そしてたいてい恥ずかしくなります。(笑))
この自己フィードバックを通じて、自分の改善すべき点に気づくことは、スキルアップにつながります。
教室での授業は、本当は教室の後ろからビデオを撮れれば最高ですが、難しいですよね。
スマホで録音なら、こっそり録音ボタンを押しておけばOKなので簡単です。
最近のスマホは高性能なので、とてもきれいに録音できます。
注意点
最後に注意点をいくつか。
話しすぎない
(授業の合間の雑談の場合)
他の授業内容がそっちのけにならないように、適度な時間で収束させるテクニックが必要です。
かつて私の同僚で、「話がおもしろい」という理由で学生に人気のある先生がいました。でもその方、教員間で共有しているカリキュラムをかなり大胆に無視していたので、他の教員でカバーしなければならず大変でした。(こちらの記事「日本語教師に向いてないかも!残念な日本語教師(前編)」のT先生です)
雰囲気の悪い・仲の悪いクラスでやらない
クラスの雰囲気が悪い場合、無理にフリートークで盛り上げようとすると逆効果になる場合があります。
険悪な雰囲気であっても授業なら静かに聴いている学習者が、フリートークになると態度を悪化させることもあります。
攻撃的になったり・・・。
後の対処が大変です。
信頼関係ができるまでは「攻めた」話題を出さない
教師は、早く学習者と仲良くなろうと焦らないほうが結果的にはいいと思います(経験上)。
自分のキャラクターは、普通に授業・レッスンをしている中でも自然に出てくるものですから、焦る必要はありません。
質の高い授業を提供し続けることで、少しずつ信頼関係を築いていきましょう。
その中で徐々に学習者の興味のある話題や、タブーの話題(例えば、「この学習者は国の家族と縁が薄いようだ」とか、「あの学習者は強めの政治的信条を持っている」とか・・・)も見えてくるものです。
こちらの記事「日本語教師に向いているのはズバリこんな人」の中で触れましたが、あるとき、あるクラスでA国とB国出身の学習者がケンカし始めたことがありました。
きっかけは教師が両国の歴史について不用意に発言してしまったことでした。
そんなこともあるので、教師は学習者に合う話題を慎重に選ぶべきだと思います。
嘘をつかない(冗談のつもりだったのに…ということもある)
話をある程度「盛る」ぐらいならいいと思いますが、
明らかな「嘘」はつかないほうがいいです。
これ、当たり前のことに感じるかもしれませんが、教師としては「冗談」のつもりで言ったことでも、学習者が「真実」だと感じてしまえば、後で整合性の取れないことが出てきたとき、学習者は「あの先生は嘘をつく」と認識してしまうかもしれません。
それは、授業やレッスンにも響いてきます。
日本人同士なら「冗談」で通じることも、外国人にはそう受け止められない場合が多々ありますので、要注意です。
日本人の会話スタイルは説明しておこう
日本人は「黙って相手の目をじっと見て聞く」ということをあまりしません。
それをされた側は、「怖い!」、と感じる場合があります。
そのことを学生に説明し、適度にあいづちやリアクションをしながら聞くよう促すと良いと思います。(教師はそれを実践して見せましょう!)
日本社会で生活する以上、こういうことも知っておくべきです。
さいごに
いかがでしたか。
フリートークは良い会話練習になりますが、教師と学習者がお互いの関係をより良いものにしていくための、貴重な時間にもなると思います。
うまく進められれば、その後の授業やレッスンは更に実り多い、楽しいものになるはずです。
フリートークは時に軽視されがちですが、その時間ならではの効果を得られるよう、工夫していきたいものです。
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