シャドーイングで日本語力アップ!効果と5ステップの指導法(学習法)

現役日本語教師の方

語学学習で行われるシャドーイング。

シャドーイングとは、

音声を耳で聴きながら、その後にほんの少しだけ遅れて(0.5から1秒ぐらい)、その音声をそのまま模倣して発音(復唱)していく学習方法。

のことです。

つまり音声を「影=shadow」のように追いかけていく、だから「シャドーイング」です。

シャドーイングは、日本語学習にも非常に効果的です。

この記事では、

シャドーイングにはどんな効果があるのか?

具体的にどのようにやればいいのか?(←シャドーイングを既にやっているけれどうまくいかないという方には、特にここを読んでいただきたい!)

注意点やコツは?

・・・といったことについて、まとめてみました。

シャドーイングには、さまざまな効果があります。

リスニング力が向上する

まず何より耳が良くなります

聴いて意味を理解すればいい聴解練習とは違い、

自分がそのまま、まったく同じように音を再現する必要があるので、

ちょっと違う種類の集中力が求められます。

知っているはずの言葉であっても、聴いたときに理解できない言葉…

聞こえる音と意味をうまく結び付けられない言葉、というのがあるものですが、

一度「文の中でこういう風に話す(発音する)んだな」ということが分かれば、

次からは耳がしっかり捉えてくれる、つまり聞こえてくるようになります。

日本語脳が鍛えられる

英語を耳で聴き、そのまま日本語に訳さずに理解することを「英語脳」などと言いますが、

これはシャドーイングで鍛えることができるそうです。

同様に「日本語脳」も鍛えることができるはずです。

聴こえた日本語に、即反応して口で日本語を操るわけですから、

いちいち頭の中で母語に訳す時間はありません。

自然に日本語を日本語のまま理解する、日本語処理能力がアップすることが期待できます。

イントネーションやアクセント、発音がうまくなる

ネイティブの日本語を追いかけてそのまま真似するわけですから、当然です。

イントネーションや語のアクセント(日本語は高低アクセント)がネイティブと違うと、

どんなに流暢な人であっても残念ながらあまり上手な日本語には聞こえません。

ときどき、もう何十年も日本に住んでいて日本語に何の不自由もないのに、

話すと「なんだか下手に聞こえてしまう」という人がいます。

それはこのイントネーションやアクセントの付け方が不自然だからです。損ですね。

シャドーイングを続けることで、より日本人に近い、自然な、日本語らしい日本語が身に着きます。

スピーキング力が向上する

シャドーイングで瞬発的に口をたくさん動かすことで、

口周りの筋肉や舌が、日本語を話すことに慣れていきます。

少しずつ口が滑らかに回るようになっていきます。

語彙や表現が増える

音声の中に出てくる語彙や表現を文脈の中で覚えることができます。

文脈の中で覚えた言葉は、記憶に残りやすく、しかも応用もしやすいです。

では次に、シャドーイングの具体的な方法です。

シャドーイングにチャレンジしてもなかなかうまくいかないという方は、ここで紹介するような「段階」を丁寧に踏んでいないのだと思います。

①まず全文を音声だけで聴く。

➡どんな話かを把握。※一回で難しければ数回繰り返して聞く。

②スクリプトを見ながら全文を聞く。

➡分からなかった箇所は、言葉を知らないため分からなかったのか、それとも知っている言葉なのに耳で捉えられなかったのか、確認する。

➡知らなかった言葉、表現は意味をチェック。

③全体をいくつかの小さなパートに分け、各パートの音声を聞きながら自分の声で繰り返すことを複数回続ける。

➡機械的に音を真似するだけでなく、常に意味も意識するようにする。

最初はスクリプトを見ながら音読するだけでOK(※難しかったら音声の再生速度を少し落としてやってみる)。

その後少しずつスピードアップ口が慣れてきたらスクリプトを見ないシャドーイングに切り替える。

イントネーションに特に注意。聞いた通りのイントネーションにできない人がたまにいます。スクリプトに高低を表す波線を書きこむなど、いろいろ工夫。

④すべてのパート練習が終了したら、全体通しでシャドーイングにチャレンジする。

⑤その後、会話文であれば、学生同士でシャドーイングしながらロールプレイイング

※ 余裕があれば応用練習。
音声の中に出てきた表現が使えそうなシチュエーションを想定し、会話をさせる。

1、大人数のクラスには向かない。

やらない人、口パクだけの人、ところどころしかやらない人、が必ず出てきます。

シャドーイングは教材さえあれば一人でもできるものです。(その場合は自分の声を録音して聞き直してみることをお勧めします)

レッスン形態としてはマンツーマンもしくは少人数クラスで取り入れるのが理想的だと思います。

音声選びは慎重に。

シャドーイングを自分でやったことのある人なら分かると思いますが(私は英語でやってみました)、

これは案外負荷のかかる大変な学習方法です。

あまり難しい音声を選んでしまうと、消化しきれず中途半端に終わってしまいます。

語彙や文型、文の構造など、本人のレベルよりほんの少し下かな、ぐらいの文を使う方がうまくいき、本人の達成感も大きいと思います。

3、シャドーイング前の準備を入念に。

シャドーイングは、初めて聴く文でいきなりやろうとしても無理です(or とても難しいです)

上で紹介したように少しずつステップを踏んで進めることで、シャドーイングはうまくいきます。

もしかしたら

最初に言葉をチェックしたりスクリプト見ながら音読したりしちゃったら、シャドーイングの意味ないんじゃないの?

と思われる方もいるかもしれません。

が!そんなことはありません!

「聴いた通りに音を真似る」という意識さえ失わなければ、ちゃんとうまくいきます。

効果は出ます。

、先回りしちゃう人がいる。

シャドーイングというものに慣れていないと、たまに、短文の箇所を覚えて音声を聞く前に先走って言ってしまう学習者がいます。自己流のイントネーションや発音で。

それでは意味がありません。

シャドーイングとはどういうものか、音を聴いて真似をすることにどんな意味があるのか、等を学習者にきちんと説明し、理解してもらいましょう。

5、長く続けよう。

シャドーイングは、一回二回やったからといって劇的に効果が出るようなものではありません。

地道に、一歩一歩、です。

ぜひ細く長く、気長に続けてください。

言語の4技能のうち、「書く」以外の3技能(聞く、読む、話す)をトレーニングすることができるシャドーイング。

もちろん、一回や二回やっただけでは目立った効果は見られません。が、細く長く続けていれば、効果は出てくるはずです。

ぜひ授業に取り入れてみてください。

やってみると、学習者の化石化した癖が判明することもありますよ。

私が以前マンツーマンレッスンでシャドーイングを行った際、

その学習者は「~かもしれません」が

「~かもしれないんです」という言い方に化石化していることが判明しました。

音声の内容は聞き取れていて理解もできていました。

それをスクリプトを見ながらシャドーイングしようとしたら、

スクリプトの「~かもし…」ぐらいが見えると、その塊を無意識に

「~かもしれないんです」に変換してしまうのです。

音が違うことは聴き取って分かっているのに、なかなか口が回りませんでした。

音声をゆっくり流し、よく聴かせながら何度も繰り返し、化石化した口癖を修正しました。

・・・こんな副産物もついてきます!

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